診療参加型臨床実習において、学生は、患者およびその家族、診療チームメンバー等との多様なコミュニケーションが求められるが、その実態には不明な点が多い。本研究の目的は臨床実習学生の対人コミュニケーションの問題事例を収集し、それを解決するための臨床実習準備教育トレーニングプログラムを開発することである。 平成29年度は、これまでの調査で学生が困難さを感じている重症患者や末期の患者との対応、小児科患者の家族との対応、病状説明を求められた際の対応について、臨床実習開始前にロールプレイを取り入れた教育を実施した学年を対象に、臨床実習の修了時点で自記式質問票による無記名アンケート調査を実施した。また、医学科学生代表からの聞き取り、看護師長および指導教員等からの学生の問題行動の具体的事例の収集を継続して実施した。この結果、医学科学生が対応に困難さを感じた事例は、10回以上9.5%、5~9回7.4%、1~4回37.9%、全くなかった45.3%、その相手は、指導医25.3%、看護師23.2%、患者23.2%、患者家族9.5%、同級生4.2%、上級生3.2%であり、前年度に比べて患者や患者家族がやや減少していた。これらは、準備教育の効果を示唆するものであるが、いまだ完全ではなく、より実践的なトレーニングプログラムの開発が必要であると考えられる。また、指導医や看護師による冷淡あるいは極端に厳しい態度等に対して、学生は依然として「我慢する」、「謝る」等の回避行動で対処している結果であり、これに対しては、学生のコミュニケーション力の向上だけではなく、指導医や看護師側の要望を調査する必要があると考えられる。 これらに加えて、看護学生、薬学部学生等との合同で、症例シナリオを用いた患者ケア・治療方針のグループディスカッションや看護師・薬剤師業務についての授業およびその見学実習を新たに考案し実施した。
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