研究課題/領域番号 |
15K08555
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
戸田 尚子 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (60645993)
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研究分担者 |
酒井 康成 九州大学, 大学病院, 准教授 (10380396)
奈良間 美保 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (40207923)
木澤 義之 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (80289181)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小児科医 / 生命維持治療 / 方針決定 / 葛藤 / 医学教育 / プロフェッショナリズム / 倫理教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、重篤な疾患や障害を抱えるこどもの命に関わる治療の方針を決定するに際し、小児科医はどのような心理社会的な体験をしているのかを明らかにすること、さらに子どもにとり最善の方針を見出し決定するに際し、必要とされている支援は何かを検討すること、を目的とした。対象者として、小児科医として5年以上の臨床経験があり、生命に関わる治療方針の最終決定に携わった経験のある医師を選出し、個別の半構造化インタビューを行った。理論的飽和に至るまで、インタビューと解析を繰り返した。データは録音後に逐語化し、一旦グラウンデッド セオリー アプローチに準じ、網羅的に解析した。13人目のインタビュー・解析を終えて、理論的飽和に至った。重篤な疾患や障害を抱えるこどもの医療方針の決定に際し、小児科医は多様かつ共通する「葛藤」を抱えていることが明らかになった。そこで「葛藤」に着目し、改めて全データを内容分析した。新規2件のインタビューを追加し、飽和の妥当性を確認した。葛藤は、5つの因子(小児科医の信念、両親・家族との対峙、社会・環境因子、医学的妥当性を求める、子どもの最善の利益を求める)とそれらの因子間の衝突により生じていることが明らかになった。それらは規範倫理学の3つの理論(帰結主義、義務論、徳倫理)と合致する枠に分けられ、方針決定に際する倫理的な葛藤が生じる背景として矛盾しないと考えられた。5つの因子の内「小児科医の信念」は、サブカテゴリーの分類がカントの提唱する行動の動機の三要素(知・情・意)と一致することから、他の4つの因子に比し上位の概念と考えられ、医師への倫理教育・医療プロフェッショナリズム教育の果たす役割への期待も示唆された。本結果は、重篤な疾患を抱える患者への最善の方針を見出すために、現場の小児科医にどのような支援が求められているかを見出すために有用な情報であると考えられた。
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