| 研究課題/領域番号 |
15K08562
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| 研究機関 | 岡山県立大学 |
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研究代表者 |
中村 光 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80326420)
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| 研究分担者 |
福永 真哉 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00296188)
京林 由季子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (20234396)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | 脳疾患 / 語用論 / コミュニケーション / 認知コミュニケーション障害 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は、音声・音韻、語彙、統語といった、ことばの形式的な側面の機能には問題がないが、ことばの使い方、すなわち語用の問題によるコミュニケーションの障害に対する評価と介入に関して、包括的な検討を行うものである。サブテーマとして、①機能の発達と老化の様相の解明、②評価法の開発と統合・確立、③介入法の開発の３つから成る。
本年度はサブテーマ①に関して、発達の側面については、小学生児童の語用的言語の年齢変化に関するデータを学会で報告した。老化の側面については、病的老化の代表であるアルツハイマー病（AD）の患者を対象に、本研究期間に開発した新規比喩文（例：道は血管のようだ）の多肢選択式理解課題を実施した。その結果、比喩理解課題の得点は、健常高齢群、軽微AD群、軽度AD群のすべての組み合わせで有意差があった。一方で、形式的言語の機能を測定する代表的検査であるトークンテストの得点は、健常高齢群と軽度AD群間では有意差があったが、健常高齢群と軽微AD群間では差がなかった。すなわち、比喩理解課題はトークンテストよりADに鋭敏で、形式的言語の問題よりも語用的言語の問題がADの本質であると考えられた。この結果について学会で報告した。また、語用的言語の問題と関連する保続現象の発現メカニズムに接近するための研究を行い、学会で報告した。
サブテーマ②に関しては、AD患者に上記の比喩理解課題とまんがの説明課題を実施し、その成績の異同について分析した結果を学会で報告した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマ①に関して、発達の側面については、小学生児童を対象にしたデータ収集と、成果の報告を進めている。老化の側面については、サブテーマ②の一環として一般的になじみのない（慣用句的でない）新規比喩文の多肢選択式理解課題を開発し、それが語用論的コミュニケーション障害の検出に有用（障害ありとなしを鑑別する）ことを明らかにした。さらに、アルツハイマー病（AD）患者にそれを実施した結果からは、比喩理解の障害は遂行機能障害や意味記憶障害と関連している可能性を見出している。現時点ではさらに、生理的老化と病的老化の中間に位置する軽微なAD患者におけるデータ収集と分析を進め、比喩理解とコミュニケーションおよびそれらの障害の本質へのさらなる接近を試みている。さらに、語用論的コミュニケーション障害と関連する保続現象の発現メカニズムに接近する研究を進めている。
サブテーマ②に関しては、上述した新規比喩文の理解課題を開発するとともに、欧米の先行研究でもしばしば採用されている、4コマまんがの説明課題や情景画の説明課題について、その有用性に関するデータを得ている。
サブテーマ③に関しては、具体的な行動学的介入として、比喩理解障害に対してPersickeら（2012）を参考に、比喩文に使用される語彙がもつ多様な意味属性を回収することによって比喩文の理解を促す方法を予備的に実施して、その有用可能性を見出している。
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| 今後の研究の推進方策 |
研究資料に関しては、現時点での主要なものは収集したが、引き続き新しい書籍・検査器具等を収集していく。また、国内外の主要な学会や研修会に参加し、情報収集を継続するとともに、データの収集と分析はかなり進み、本科研費研究としてはまとめの段階に入っているので、研究成果の発信にさらに力を入れていく。
サブテーマ①に関して、発達の側面については、すでに学会で予備的な報告（口頭発表）を行ったところであるが、小学生児童を対象にしたデータ収集をさらに継続し、一定の結論を得る計画である。老化の側面については、軽微アルツハイマー病患者に対するデータについて、すでに学会で口頭発表を行ったが、追加で収集したデータを加え、これらをすべてまとめて英文誌への論文投稿の準備を進めているところである。保続現象については、山田円（元大学院生）と共同で、6月に富山で開催される「日本言語聴覚学会」において成果の一部を口頭発表する予定である（タイトル：失語症者における呼称課題条件と言語性保続の発生）。さらに、論文発表も計画している。
サブテーマ②に関しては、すでに本研究期間を通じて、語用論的コミュニケーションの問題を評価するのに潜在的に有望ないくつかの評価法を実施（一部は新規に開発）している。本年度は、それぞれの特徴について分析を深め、一定の結論を得る予定である。
サブテーマ③に関しては、比喩理解障害に対するPersickeら（2012）の行動学的介入方法をベースに、試験的な小規模介入を行っているが、方法の改良を進めながらこれを継続し、知見を積み重ねていく予定である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
（理由）
研究の遂行はおおむね順調であり、次年度使用額が生じたのは、前年度からの繰越額があったからである。
（使用計画）
前年度からの繰越残額はその前年からは減っている。今年度は研究データの収集に加えて、研究成果の学会における口頭発表や英文も含めた論文発表を複数予定しており、今年度中に次年度使用額はなくなる予定である。
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