研究課題/領域番号 |
15K08572
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
荒木 尚 日本医科大学, 医学部, 講師 (30287677)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳死判定 / 生命倫理 / 臓器提供 / 死 |
研究実績の概要 |
平成28年度は調査内容を具体的に決定し、アンケート素案を作成した。日本医科大学倫理委員会の承認を得たのち、速やかに調査票の送付を行った。無記名式調査であり、全国の脳死下臓器提供施設5 類型を対象とした。全国850施設調査票を送付、209施設から回答を得た(回答率24.5%)。調査票を集計し分析した結果、概要として以下の通り傾向が把握できた。先ず家族説明において「脳死」という語彙を用いるかについては回答施設の64.8% で用いられていた。また54.1%の施設では「脳死と診断された旨を正確に伝え」 ていた。「日常的に一般的脳死診断を行う」と回答した施設の42.5%では、 無呼吸テストを含まない基準を用いており、法的脳死判定基準を用いている施設は30.8%であった。また脳波・ 脳血流検査のみで診断するとした施設は15.8%であった。無呼吸テストを実施しない施設の59.6%は「 家族説明や治療方針決定のためにはABRや脳波のみで十分」と回答した。以上の調査を総覧し、一般的脳死の診断はその基準が一律でなく、医学的評価の質にばらつきを生じる可能性があることが明らかとなった。救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~に則るならば、不可逆的な全脳機能不全(脳死診断後や血流停止の確認などを含む)であると十分な時間をかけて診断された場合には終末期と定義されうるが、臓器提供の前提の有無によりを脳死診断の法的な位置付けが変わるわが国では、不備な医学的評価による脳死診断が発生する可能性を常に懸念しなくてはならない。多死社会を迎えるに当たり、終末期の判断を迫られる医療現場において「 一般的脳死」の診断とは果たしてどうあるべきか生命倫理の視点から考察を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在調査票の受付を締め切り、回収を終了した。回収調査票は開封され、データは集計、解析が終了し結果考察を進めている段階にある。今後関連学会における発表を通して質疑を受け、さらに考察を昇華させた上で報告書を作成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
救命救急、脳神経外科、生命倫理関連の学会にて発表を行い、その都度質疑を受ける。質疑については記録し考察の参考とする。関連文献を渉猟し、海外の状況も参考として報告書を作成する。考察が偏向したものとならないよう査読を受け、可能な限り英文論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入をする必要が無くなったため
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次年度使用額の使用計画 |
翌年の費用に加算し、分析や報告書作成の目的に使用する予定である。
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