研究課題/領域番号 |
15K08573
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
可知 悠子 日本医科大学, 医学部, 助教 (10579337)
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研究分担者 |
川田 智之 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (00224791)
高橋 美保 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (10549281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非正規雇用 / 健康影響 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
まず、官庁統計(国民生活基礎調査)やパネル調査(J-SHINE study)のデータを用いて、日本における非正規雇用の健康影響に関して研究を実施した。官庁統計のデータを用いた研究では、雇用形態によって予防的健康行動、すなわち健康診断の受診割合がどのように違うのかを検討した。その結果、パートや派遣といった非正規雇用者で健康診断の受診割合が低いことやその理由が明らかになった。パネル調査のデータを用いた研究では、非正規雇用による雇用不安が継続することにより、心理的ストレス反応が高まるかどうかを検討した。その結果、雇用不安の継続が心理的ストレス反応を高めるが、男女で機序が異なる可能性が示唆された。つまり、男性では家族の働き手としての負担が、女性では仕事と家事の両立の負担が、雇用不安と心理的ストレス反応との関連を説明している可能性が認められた。これらの結果を国外の成果と比較することにより、日本の文化的・制度的特徴が非正規雇用の健康にどのように影響しているのかを考察した。
次に、日本・欧米の非正規雇用と関連する文化的・制度的特徴について、有識者へのインタビュー調査を実施した。その上で、日本・欧米の各国を福祉国家の類型論に基づいて6つに分類し、文化的・制度的特徴を整理した。分類別に非正規雇用の健康影響に関する文献を調査した結果、社会保障の手厚いスカンジナビア諸国では、非正規雇用の健康影響が比較的小さい傾向が見られた。一方、東アジア諸国は社会保障を家族と企業に依存しており、頼る家族がいない場合に非正規雇用の健康影響が大きくなる傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
妊娠・出産、復帰後の時短勤務のため。
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今後の研究の推進方策 |
日本・欧米で実施中の大規模な中高齢者縦断調査の比較分析を行い、文化的・制度的背景によって非正規雇用の健康影響が異なるかどうかを検証する。
具体的には、日本・欧米の中高齢者縦断調査を入手し、個別データのメタアナリシスの準備を進める。各調査は高齢社会に対応する社会保障政策の企画立案を目的として実施されている。これらは健康状態、経済状況、家族関係、就業状況といった多面的かつ国際的に比較可能なデータを含んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
妊娠・出産、その後の時短勤務により、計画よりも研究の遂行が遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内外でのヒヤリングに係る旅費、人件費・謝金、学会や論文での成果発表に係る投稿料や旅費、研究補助員への人件費に使用する予定である。
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