研究実績の概要 |
モノカルボン酸輸送担体(MCT)はがんの予後不良因子として報告されており、MCTの機能を阻害することでがん細胞の増殖を抑制する試みが注目を浴びている。近年、MCT1あるいはMCT4の特異的な阻害剤の探索がなされているが、MCTの発現・機能阻害とがん細胞の増殖・運動能抑制メカニズムについての情報は未だ不足している。本検討ではがん細胞の増殖に関わり、かつがん組織により発現の異なるMCT1, 4に着目し、MCTの阻害効果を利用したがんの増殖・転移の回避法の確立を目指す。これまでに我々はMCT1, 4 siRNAによるMCT1あるいは4の発現抑制により、ヒト乳腺がん由来細胞(MCF-7, MDA-MB231)の生存率を有意に低下させること、ならびに運動能を低下させることを明らかにした。またMCT1基質であり、殺細胞効果を有する3-Bromopyruvate (3-BP)、MCT1,4阻害剤であるα-cyano-4-hydroxycinnamic acid (CHC)をポジティブコントロールとしてMCTの阻害と乳腺がん細胞の生存率について検討した結果、CHCと比較して低濃度でMCT1あるいは4を阻害する新たな化合物を見出した。さらにこれらの化合物ががん細胞の生存率を低下させることを示唆した。現在、さらに低濃度でMCTの阻害とMCT発現がん細胞の生存・運動能を抑制する化合物を探索中であり、これらの体内動態解析を行うことでMCTを指標とした新たながんの進展抑制に向けた新規戦略の開発の一助としたい。
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