研究課題
本研究の目的は、わが国で自生する落葉樹エンジュから抽出した精製レクチン(Maackia amurensis seed lectin, MASL)のポドプラニン分子に対する特異的な機能に注目し、培養細胞および疾患モデルを用いた実験系でその機能について解明しようとするものである。現在までに我々は乾癬表皮表皮基底層においてポドプラニン分子の発現が亢進していることを示しているが、今年度、通常培養細胞系、3次元培養系を用いて以下のような検討を行った。通常培養系においては、ポドプラニンを高発現する有棘細胞癌由来細胞を用いて、ポドプラニンが培養液中に可溶化されるか否かについて検討を行った。HSC-2、HSC-4細胞株においては細胞密度が高まった際にポドプラニンの発現が誘導されるが、この際に培養上清中に明らかな可溶化ポドプラニンは確認できなかった。より、精密な実験を要するが、正常表皮角化細胞ではこれらの皮膚癌細胞株よりもポドプラニン発現レベルは低く、ポドプラニンは表皮角化細胞では可溶化されないものと考えられた。3次元培養系を用いた検討では、乾癬表皮の肥厚に関わるIL20 ファミリーに属するIL22、IL24を用いて検討を行った。この結果、3次元培養表皮においてもIL22、IL24添加時にポドプラニン分子の発現が誘導されることが明らかとなった。興味深いことに、通常培養系における表皮角化細胞では通常の状態でポドプラニンの発現が増強した状況にあることが同時に示された。この結果からは、ポドプラニンは増殖が亢進した状況で誘導される可能性が高いことが示された。また、IL22を添加した3次元培養表皮では表皮肥厚がみられるが、MASLを添加した際にはIL22添加表皮特異的に表皮肥厚が抑制されることが示された。以上の結果から、ポドプラニンは乾癬治療のターゲット分子となりうる可能性が示されていると考える。
3: やや遅れている
対象皮膚疾患として乾癬および皮膚癌を予定していたが、今年度は乾癬モデルを中心に解析を行っており、皮膚癌細胞における検討がやや遅れている。しかしながら乾癬モデルにおける検討はおおむね順調に遂行できていると考えている。
3次元培養表皮を用いた乾癬モデルにおける、エンジュレクチンの表皮肥厚抑制作用が示されているが、これがポドプラニン抑制効果によるものか、ポドプラニン発現細胞に対するレクチンの作用かを明らかにするため、ポドプラニン中和抗体を用いた検討を行いたい。これまでに得られた研究結果について、反復した実験を行うことで、再現性を確認するとともに、イミキモド等によるマウスでの乾癬モデルにおけるMASLの作用についても検討を加えたいと考えている。
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