研究課題
申請者らは既存の認知症治療薬であるメマンチンの新しい作用機序として、KATPチャネル(Kir6.1/Kir6.2チャネル)抑制作用を発見した(Moriguchi et al., Mol. Psychiatry 2018; IF:13.314)。メマンチンがKir6.2チャネル抑制作用により脳インスリンシグナルを賦活化するというこの発見は、アルツハイマー病(AD)の脳糖尿病仮説を実証する最初の報告である。そこで申請者らはKir6.2チャネル発現細胞を用いて、メマンチンとは異なる構造を持つシーズ化合物(アダマンタン誘導体)をスクリーニングして、メマンチンに比べて強力にKir6.2チャネルを抑制する化合物(本剤)を含む化合物群を創製した。本剤は、マウスによる実験で強力なKir6.2チャネル抑制作用による認知機能改善効果(AD中核症状)に加えてKir6.1チャネル抑制作用によるうつ症状・不安症状・攻撃症状などのAD周辺症状(BPSD)を改善することが確認された。さらに本剤は、神経伝達作用もしくはAβを標的とした薬剤ではないにも関わらず、Aβ蓄積を抑制することが確認された。特に、メマンチンでは10μM以上において培養神経細胞における神経細胞死が観察されるが、本剤では100μMの濃度において神経細胞死は確認されず、非常に安全な化合物である。また、本剤にはメマンチンと異なり、NMDA受容体阻害作用は認められない。ADに代表される認知症の認知機能改善効果に加えて、うつ症状、不安症状・攻撃症状、徘徊などのAD周辺症状を改善する治療薬が期待できる。
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Neuropharmacology
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