研究実績の概要 |
本研究では癌性腹膜炎に対する腹腔内化学療法の実現のため、ゼラチン微粒子のシスプラチン徐放化製剤(gelatin microspheres incorporating CDDP: GM-CDDP)の最適化、すなわち、従来生成過程に使用していた有機溶媒であるアセトンを使用せず、かつ投与直後に結合の弱いCDDPが約20%放出される初期バースト現象を2%以下まで大幅に抑制した新たな製剤(gelatin hydrogel granules with incorporated cisplatin; GHG-CDDP)を開発した。 GHG-CDDPの特性評価として分解性試験、CDDP放出試験を施行。更にヒト胃癌細胞(MKN45-Luc)腹膜播種マウスへGHG-CDDP を腹腔内投与し、IVISを用いて抗腫瘍効果を評価し、全生存期間および有害事象を観察した。GHG-CDDP治療群では、PBS投与群に対する有意な生存期間延長(P=0.034, log rank test)と、腫瘍発育抑制(P<0.05)を認めた。また安全性試験では、有意に体重減少を軽減し、CDDP投与群で認められた治療関連死や、白血球減少や血小板減少といった骨髄抑制も有意に抑制した。また、CDDPに特徴的とされる尿細管壊死もGHG-CDDPP投与群では認めなかった。 我々の開発したGHG-CDDPは、徐放化により副作用を軽減し、大量投与による抗腫瘍効果の増強が可能であり、現在根治の期待できない悪性腫瘍の腹膜播種の治療戦略における大きなブレークスルーとなりうると考えられた。
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