研究課題/領域番号 |
15K08588
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
向原 徹 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (80435718)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3次元培養 / 初代培養 |
研究実績の概要 |
研究計画では、7種類の乳癌患者由来ゼノフラフト(patient-derived xenograft、PDX)を用いて、3次元(3D)初代培養の方法を確立する予定であった。しかし、PDX腫瘍細胞は、間質組織成分や壊死組織の混入により、安定して3D培養をすることは困難であった。患者腫瘍では、PDX腫瘍以上に癌細胞以外の成分の混入が予想されるため、腫瘍からの3D培養に取り組む前に、患者胸水、腹水(体腔液)由来の癌細胞の3D初代培養にまず取り組むこととした。 体腔液の3D培養では、当初癌細胞に加え、マクロファージや中皮細胞の増殖が観察された。中皮細胞の増殖は、3D培養プレート上に播種する細胞数を十分少なくすることで抑制できたが、マクロファージには足場依存性がないためか未だ増殖がみられる。現在マクロキラーを用いてマクロファージを予め取り除くことで、体腔液中の癌細胞を純化できないか試みている。 3D初代培養下の腫瘍細胞と由来腫瘍の分子学的プロファイルの相違についても本年度中に検討する予定であったが、上記の如く、PDX腫瘍の3D初代培養が予想以上に困難なため進んでいない。しかし、PDX腫瘍から3D培養が可能であった1例に関して、PDX腫瘍の2D培養および3D培養、PDX腫瘍、患者腫瘍の4検体間のki67の発現を免疫組織学的に評価した結果、PDX→3D→2Dの順に元々の患者検体における発現レベルを反映していることが分かった。この結果は、3D初代培養が2D培養に比べ、よりin vivo腫瘍の形質を反映していることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、PDXからの初代培養の最適化が進まず、体腔液からの3D初代培養に舵をきったことで、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、体腔液中の癌細胞の3D初代培養の系を確立したい。特に、薬物療法の前後で体腔液を採取するように努めており、①3D初代培養を用いた薬効試験の臨床的効果の予測性、②薬物療法前後の癌細胞の分子プロファイルの変化に基づく耐性機構の解明と耐性克服、に主眼をおいて研究を進めたい。 体腔液中癌細胞の3D初代培養系が確立できた後には、そのノウハウを生かして、PDX腫瘍の3D初代培養に今一度取り組みたい。体腔液中癌細胞の3D初代培養から、癌細胞を純化し増殖させる方法論は、PDX腫瘍の3D培養にも応用可能と信じる。 さらに、当初の研究計画にはなかったが、PDX腫瘍と間質系細胞の3D共培養による腫瘍-間質相互作用を探索する研究もスタートさせており、今後推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では、主に免疫不全マウスの購入費を計上していたが、PDX腫瘍の3D培養から、患者体腔液の3D初代培養を優先して行う方針としたため、当初の計画より支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
PDXを用いた研究と、PDX腫瘍と3D初代培養との網羅的解析にできる限り早く移行したい。これら研究に必要な、3D培養プレート、免疫不全マウス、網羅的解析委託費、に使用したい。また、3D初代培養の評価のために、神戸大学先端組織染色センターに免疫染色を委託する予定である。その委託費としても使用したい。
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