研究課題
前年度までに、patient-derived xenograft (PDX)由来がん細胞を脂肪幹細胞と3D共培養すると、がん細胞のみの3D培養に比べて、がん細胞の増殖が修飾されることを見出していた。我々は、この現象を説明する分子を同定するため、がん細胞単独培養下と、脂肪幹細胞との共培養下の細胞培養液をサイトカインアレーを用いて比較し、adipsinが共培養下に脂肪幹細胞から高分泌されていることを見出した。adipsinは補体副経路において、C3aおよびC3bの産生に関わる分子である。実際、共培養下の培養液中には、がん細胞単独培養下の培養液中よりも高濃度のC3aの濃度が含まれていることを確認した。さらに、adipsinを特異的阻害薬またはノックダウンを行うと、スフェロイド形成が抑制されるとともに、がん細胞表面のstem-cell markerであるCD44やケモカインであるCXCL4の発現が抑制されることも見出した。以上より、脂肪幹細胞は乳癌の微小環境において重要な構成因子であり、脂肪幹細胞が分泌するadipsinはがん細胞の増殖や幹細胞様形質の維持に関わっていることが示唆された。
4: 遅れている
研究者2017年4月1日をもって、前任地の神戸大学から国立がん研究センター東病院に異動となり、研究室のセットアップに時間を要したことから、当該研究の進捗が遅れている。
国立がん研究センター東病院内で研究を継続するための実験スペースおよび人的リソースは確保されたため、研究の継続は十分可能である。
研究者の施設異動に伴い、研究の進捗が遅れたため、研究費を予定通り執行できなかった。現在、新施設にて研究が行える体制が整ったため、主な使途を細胞培養関係の消耗品として研究費を用いる予定である。
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Anticancer Res
巻: 38 ページ: 2831-2839
10.21873/anticanres.12528