研究課題/領域番号 |
15K08590
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
猪川 和朗 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 准教授 (40363048)
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研究分担者 |
森川 則文 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (30346481)
大毛 宏喜 広島大学, 病院(医), 教授 (70379874)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨床 / 感染症 |
研究実績の概要 |
本研究では,感染症治療における薬物[抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬]-病原体[細菌・真菌・ウイルス]-宿主[患者]免疫の3者が,相互に関連し合う関係性を解明し,薬物治療法を定量的に最適化することを目的とした。このため,感染症治療における「抗感染症薬の標的部位移行動態」,「細菌・真菌・ウイルスの薬物耐性」,「患者の免疫機能状態」データを用いて,3者相互関連性をモデリング&シミュレーションの手法により定量的に解析し,臨床的な検証を経ることにより,感染症患者に対する個別的で至適な薬物治療法を実現させるアルゴリズムを確立することを目指して,平成28年度には下記のとおり実施した。 各種抗感染症薬の組織体液中・血中濃度測定,病原体の静的・動的な耐性データの収集,臨床治療データの収集により得られた値を定量的に解析し,モデル構築とそれに基づいたシミュレーション予測により,感染症患者に対する個別的で至適な薬物治療を実現させる方法論の確立を試みた。ペニシリン系抗菌薬とβラクタマーゼ阻害薬の配合製剤(ampicillin-sulbactam,piperacillin-tazobactamなど)においては,腹水・腹膜組織や前立腺組織への移行性に関して明らかにしたうえで,腹膜炎や前立腺炎に対する個別最適化投与法の知見を得た。免疫機能の低下した超高齢者における薬物動態・薬力学,有効性・安全性を明らかにしたうえで,病原体の耐性化に対する個別最適化投与法についても知見を得た。また,抗真菌薬や抗ウイルス薬についても検討し,知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度には,薬物動態・病原体耐性・宿主免疫に関して得られたデータに基づいて,モデリング&シミュレーションによる定量的な解析を行うことを予定していた。 各種抗感染症薬の組織体液中・血中濃度測定,病原体の静的・動的な耐性データの収集,臨床治療データの収集により得られた値を定量的に解析し,それに基づいた予測により,感染症患者に対する個別的で至適な薬物治療を実現させる方法論について検討した。その結果,ペニシリン系抗菌薬とβラクタマーゼ阻害薬の配合製剤(ampicillin-sulbactam,piperacillin-tazobactamなど)では,腹水・腹膜組織や前立腺組織への移行性に関して明らかにしたうえで,腹膜炎や前立腺炎に対する個別最適化投与法の知見を得た。免疫機能の低下した超高齢者における薬物動態・薬力学,有効性・安全性を明らかにしたうえで,病原体の耐性化に対する個別最適化投与法についても知見を得た。また,抗真菌薬や抗ウイルス薬についても検討し,知見を得た。以上のとおり,おおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において今後はモデリング&シミュレーションをさらに実施する。このため,各薬物動態データの標的臓器薬物動態モデルによる解析,各in vitro・in vivo データの作用機序モデル組込による治療効果シミュレーション予測,予測治療効果と実測臨床データの比較整合による感染症治療モデルの修正と関係式の構築を予定している。そして,定量化された知見を感染症患者へプロスペクティブに臨床適用し,フィードバックによる修正を図ることで,個別的で至適な薬物治療法アルゴリズムを確立することを目指す。このため,最適薬物療法設計ソフトウェアの開発として,構築された関係式に基づき,薬物,病原体,宿主免疫の特性因子から,個別至適療法を設計するソフトウェアを構築する計画である。続いて,プロスペクティブな臨床的適用とフィードバックによる修正として,最適化薬物療法設計ソフトウェアを各協力施設に配布して,感染患者に対してプロスペクティブに適用する計画である。これらにより,適用結果のフィードバックによる修正を図り,感染患者に対する個別的で至適な薬物治療法を実現するアルゴリズムを確立することを目指す。
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