研究課題
有機カチオントランスポーター6(Organic cation transporter 6: OCT6)の臨床応用を目指し、OCT6の遺伝子多型とシスプラチンの効果について現在検討をおこなっている。非小細胞肺癌でシスプラチンを含んだ化学療法を行った症例で、あるOCT6の遺伝子多型によりシスプラチンを含んだ化学療法の効果に差があることを認めた。シスプラチン併用治療における有望なバイオマーカーは未だ存在していないため、肺癌細胞株を用いた基礎的研究とともに、肺癌組織検体でのOCT6の発現を含めさらに研究をすすめる。またシスプラチンと同じプラチナ製剤であるカルボプラチンについても、OCT6の発現や遺伝子多型と治療効果との関連について、基礎と臨床の両面から検討を行ってゆく。一方でこのOCT6の遺伝子多型はアントラサイクリン系抗がん剤であるアムルビシンの薬剤代謝にも関わること認めた。肺癌症例でAMR投与後の血中濃度をモニタリング行ったデータを解析すると、このOCT6の遺伝子多型により、薬物濃度時間曲線下面積(Area Under the blood concentration-time Curve:AUC)に有意な差を認めることが明らかとなった。以前よりAUCとアムルビシンの副作用である骨髄毒性との間に相関関係があることも知られており、現在治療効果との関連のみならず、OCT6の遺伝子多型とアムルビシンの骨髄抑制との関連についても検討している。アムルビシンは既治療小細胞肺癌に対する有効な薬剤である反面、骨髄毒性の頻度が高度に認められるため、アムルビシン治療を行う上での有望なバイオマーカーになり得る可能性を目指し研究をすすめる。
3: やや遅れている
現在OCT6の発現抑制肺癌細胞株の樹立に至っていない。さらにクリスパー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)システムによるゲノム編集技術を用いて、OCT6の遺伝子多型の細胞株の樹立も並行して行っている。細胞株が樹立されれば、薬剤代謝における基礎的な解析を行う予定である。
OCT6強制発現細胞株とともに、親株やコントロール細胞株と比較し、どのような抗がん剤や分子標的治療薬がOCT6の基質となってその感受性の変化や細胞内薬剤濃度に変化を及ぼすか検討を行う。またOCT6の遺伝子多型がOCT6発現や機能にどのような影響を及ぼしているかも検討する。さらにOCT6が基質となる抗癌剤や分子標的治療薬について、臨床的な効果や副作用との関連についてさらに検討を加えてゆく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Biomed Rep
巻: 5 ページ: 639-643
10.3892/br.2016.772