研究課題
インスリン由来アミロイドーシスは、インスリン治療中の糖尿病患者において、注射されたインスリンがアミロイド蛋白となり皮下に沈着する合併症である。本研究は、インスリン由来アミロイドーシスの病態を明らかにし、また細胞毒性と構造の関連及び細胞毒性が生じるメカニズムを解明することを目的としている。インスリン由来アミロイドーシスの頻度を知るために、インスリン治療中の糖尿病患者182名に対しMRIを実施した。その結果、約15%にMRI所見上アミロイド沈着が疑われた。これらの疑わしい患者に対し生検を行って、アミロイド沈着の有無を確かめている。またインスリン治療歴などの臨床的情報やインスリン抗体価を測定し、アミロイド沈着との関連を検討する。さらにインスリン由来アミロイドーシスの16症例をまとめて検討した。16例のうち2例は腫瘤を触知しないアミロイド沈着であり、それらは腫瘤を触知するアミロイド沈着と同様な臨床的影響を示したが、画像所見は異なる可能性が示された。さらに8例について長期的予後を検討し、血糖コントロールやインスリン量は悪化していないことが明らかになった。インスリン由来アミロイドーシスの細胞毒性と構造の研究は、細胞毒性を示す例では電顕でアミロイドの構造が異なる可能性が示された。さらに細胞毒性が周囲組織に影響する可能性が示唆された。本研究によりインスリン由来アミロイドーシスの病態がより明らかとなり、インスリン療法の改善につながることが期待された。
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