研究課題/領域番号 |
15K08598
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
高原 章 東邦大学, 薬学部, 教授 (80377481)
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研究分担者 |
相本 恵美 東邦大学, 薬学部, 助教 (20756358)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心房細動 / 心房拡大 / 慢性容量負荷 / アルドステロン |
研究実績の概要 |
腹部大動脈と下大静脈に外科的な処置を施すことにより作成した動静脈瘻ラットでは、心臓に対する慢性的な容量負荷により心房の拡大や心房内伝導遅延が生じ、心房細動が発生しやすくなることが当研究室の実験結果より明らかにされている。このような組織学的ならびに電気的リモデリングが成立する過程に神経体液性因子が関与する可能性があるため、心臓血管系におけるリモデリング機構で中心的な役割を担うことが知られているレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の因子が動静脈瘻ラットにおける心房細動誘発性に与える影響を検討した。 アルドステロンを慢性投与した動静脈瘻ラットでは、発作性心房細動の自然発生が観察され、高頻度刺激により誘発された心房細動の持続時間は動静脈瘻ラットに比べて3倍程度延長した。一方、アンジオテンシンⅡを慢性投与した動静脈瘻ラットでは、発作性心房細動の発生は認められず、高頻度刺激により誘発された心房細動の持続時間は動静脈瘻ラットと同程度であった。本検討で投与したアルドステロンとアンジオテンシンⅡは、心臓の形態学的指標や心房内伝導時間や心房有効不応期といった電気生理学的指標に有意な変化を及ぼさなかった。 以上の結果より、アルドステロンは心房細動の誘発促進因子として作用する生体内物質であり、慢性容量負荷存在下でこの作用が強力に発揮されることが明らかとなった。従来の知見では、心房細動の誘発促進には組織学的ならびに電気的リモデリングの関与が示されてきたが、本実験モデルにおいてこれらと異なる機序の関与が想定される結果を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性的に投与したアルドステロンが心房細動の誘発促進因子として作用することが明らかとなり、研究は概ね順調に進んでいる。ここまでの研究ではアルドステロンを4週間にわたり持続投与してきたが、アルドステロンの最大効果を見極めるためには、投与量や投与期間を含めた至適な実験条件を見出すことが課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
アルドステロンの至適投与量を早急に検討する。至適条件においてイオンチャネルの発現を検討し、心筋の脱分極や再分極過程ならびに静止膜電位の維持に重要な役割を担っているイオンチャネルを中心に分析を進める。同時に神経体液性因子の生体内挙動を精査し、心筋細胞に対し電気生理学的な変化を与えうる生体内因子をピックアップする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品が通常より安価に購入できたことにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の遂行に必要な実験動物や試薬など消耗品の購入し研究費を使用する計画である。
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