研究課題/領域番号 |
15K08602
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西澤 幹雄 立命館大学, 生命科学部, 教授 (40192687)
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研究分担者 |
海堀 昌樹 関西医科大学, 医学部, 准教授 (30333199)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 敗血症 / センスオリゴ / 誘導型一酸化窒素合成酵素 / 肝細胞 |
研究実績の概要 |
1.ヒト培養細胞を用いたセンスオリゴの最適化:ヒト培養細胞として肝細胞由来の細胞では誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現が非常に低く解析が難しかったため、iNOSの誘導的発現が認められているDLD-1株を用いて実験を行った。まずヒトmRNAの二次構造を予測し、種間で保存されている配列をもとにしてiNOSのセンスオリゴの配列を設計した。次にiNOSのセンスオリゴを細胞に導入し、リアルタイムRT-PCR法でiNOS mRNAを定量してセンスオリゴの効果を判定した。iNOS mRNA量が最も減少する配列を決めるため、センスオリゴ配列の位置を少しずつずらしたものを作製し、細胞に導入した。その結果、iNOS mRNA量が顕著に減る最適化配列がほぼ決まった。 2.敗血症モデル動物の遺伝子発現のパターンの解析:敗血症モデルにはガラクトサミンとLPSを投与したラット、および部分肝切除後にLPS投与したラットを用いた。投与後に肝臓を摘出してRNAを抽出し、対照ラットのRNAとともにマイクロアレイ解析を行い、mRNA発現のデータが得られた。現在、それぞれのmRNA発現の比較解析を開始した。 3.敗血症モデル動物でのセンスオリゴの効果の検討:平成28年度の実施を計画していたが、ラット用のiNOSセンスオリゴの最適化配列がわかっていたので、ラット投与実験を始めた。センスオリゴの単回投与を試みているが、投与方法や投与条件の至適化を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ヒト培養細胞を用いたセンスオリゴの最適化:ヒト用センスオリゴの配列の検討についてはiNOS発現が認められている培養細胞株を用いたため、最適な配列がほぼ決まった。トランスフェクション試薬についての検討も不要であったため、目標どおりに進んでいる。しかし配列最適化にかなり時間がかかったため、センスオリゴの塩基修飾(S化、LNA、2’-O-メチル化など)については検討はあまり進んでいない。 2.敗血症モデル動物の遺伝子発現のパターンの解析:敗血症モデルのマイクロアレイ解析を行い、発現データが得られた。mRNAのパターン比較にはかなり時間がかかっている。 3.敗血症モデル動物でのセンスオリゴの効果の検討:iNOSセンスオリゴの最適化配列がわかっているものの、塩基修飾したセンスオリゴを使うため、ラットに投与するとなるとかなり高額になる。そのため致死率の改善だけを評価指標としても、一回の実験でiNOSセンスオリゴを投与するラットの匹数を多くすることができない。したがって、投与方法や投与条件の至適化に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヒト培養細胞を用いたセンスオリゴの最適化:ヒト用のiNOSセンスオリゴについては最適配列がほぼ決まったので、塩基修飾(S化、LNA、2’-O-メチル化など)について検討を行う。常法にしたがい、まずS化とLNAについて試みる予定である。目的遺伝子以外への有害な効果(off-target効果)についても調べる。iNOSと同じ細胞株をもちいて、ヒト用のTNFのセンスオリゴの最適配列や塩基修飾についても検討していく。 2.敗血症モデル動物の遺伝子発現のパターンの解析:敗血症モデルラットのマイクロアレイ解析データをもちいて、mRNAパターンの比較解析を継続して行う。 3.敗血症モデル動物でのセンスオリゴの効果の検討:高額な塩基修飾iNOSセンスオリゴを使うという制限があるが、ラットへの投与回数や投与量などの条件の検討を行う。まず致死率の改善を評価指標として実験を進めていき、その後にサイトカイン発現について検討していく。敗血症モデルのマイクロアレイ解析データとの比較も行う。また細胞を使ってTNFセンスオリゴの最適配列が決まったら、TNFセンスオリゴのラットへの投与についても検討していく。
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