研究課題
覚せい剤の急性高用量投与は、速やかな異常行動の発現を引き起こす。実験的にマウスに高用量の覚せい剤(3-10 mg/kg)を腹腔内急性投与すると、過運動(hyperlocomotion)~常同行動(stereotypy)が発現することが観察される。これらの症状は、例えば麻薬もマウスでは過運動を誘発することが知られており、覚せい剤依存治療と麻薬作用への対応には、共通なメカニズムが存在する。H27~28年度に引き続き、「ヒスタミン神経系活性化による覚せい剤作用の抑制効果」仮説に基づき、特にヒスタミンH3受容体逆作動薬に着目し、その神経終末でのヒスタミン含量増加作用を作用力価の指標に、本研究課題に合致する効果を有する脳内ヒスタミン神経系活性化効果を持つ化合物の探索を並行して行った。その結果、非イミダゾール系化合物のひとつJNJ-10181457が新たに脳ヒスタミン神経系を、視床下部からヒスタミンを遊離することで、活性化する薬物であることを確認した。中枢ヒスタミン神経系に作用して覚せい剤作用を改善する薬物を開発するリード化合物になり得ることを行動薬理学的に示した。さらに、覚せい剤とは作用メカニズムは異なるが、依存薬物のひとつであるモルヒネによる過運動に対して、JNJ-10181457が覚せい剤の場合と同様に抑制的に作用することを明らかにした。このことは、ヒスタミンH3受容体逆作動薬が、依存薬物の諸症状を引き起こす共通な神経機構に作用して緩和する可能性を示唆する。ヒスタミン神経系と常同行動との関連については、依存薬物ではない薬物メマンチン(中等度から重度アルツハイマー型認知症の治療薬)がマウスにおいて常同行動を引き起こすことを発見し、それについてヒスタミン受容体活性化作用を持つ薬物betahistineが抑制することを見出した。行動異常とヒスタミン神経系の活性化との強い関連を示唆する。
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Biomedicine & Pharmacotherapy
巻: 100 ページ: 116~123
10.1016/j.biopha.2018.01.160