研究課題/領域番号 |
15K08605
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
森 秀治 就実大学, 薬学部, 教授 (50220009)
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研究分担者 |
豊村 隆男 就実大学, 薬学部, 講師 (40425137)
渡邊 政博 就実大学, 薬学部, 助教 (10758246)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 組織リモデリング / 炎症 |
研究実績の概要 |
アレイ解析や親和性クロマト等の手法を用いてAGEに相互作用を示す因子の網羅的探索を行い,AGEをコアとする複数個の因子群によって構成される起炎性複合体形成の組織リモデリング発症・増悪化プロセスにおける病態生理学的意義について検討した。また,より広い視点でAGEに相互作用を示す因子の起炎性活性を明らかにするために,培養免疫細胞などを用いた炎症応答解析や組織リモデリング病態モデルの確立に取り組んだ。具体的には,第一の探索系としてAGE自体でアミノ基を持った担体とカップリングし,AGEを特異プローブにした不溶性担体を開発し,これを用いて動物組織ホモジネートを原材料として相互作用因子の探索と起炎性複合体形成について検討した。AGE化担体を組織ホモジネートと反応させ,洗浄後に高塩濃度溶液で溶出した画分を電気泳動分離し,質量分析にて分子同定をはかった。その結果,AGEと相互作用を示す複数個の因子が検出され,一次配列レベルでの類似性からリボソーム由来と想定される複数個の因子がAGEと相互作用することが明らかとなった。本因子の組換え体を作製し,培養細胞を用いた炎症性サイトカインmRNAの発現誘導を指標にして炎症賦活化作用を評価したところ,有意な起炎性応答を誘導することが明らかになった。また,第二探索系としてタンパク質アレイ解析によるAGE相互作用因子を検討したところ,複数個の因子が見出され,その中にTNF類似の因子が存在することがわかった。この相互作用因子の作用様式を検討すると共にAGE共存による影響も解析した。これらの知見からAGEをコアとする起炎性複合体形成の可能性がより鮮明なものとなり,新たな創薬標的としての意義付けに繋げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AGEを特異プローブにした不溶性担体を開発し,相互作用因子の探索と起炎性複合体形成について検討したところ,一次配列レベルでの類似性からリボソーム由来と想定される複数個の因子がAGEと相互作用することが明らかとなった。本因子の組換え体を作製し,培養細胞を用いた炎症性サイトカインmRNAの発現誘導を指標にして炎症賦活化作用を評価したところ,有意な起炎性応答を誘導することが明らかになった。また,タンパク質アレイを用いてAGE相互作用因子を検討したところ,複数個の因子が見出され,この中から高親和性を示す因子を調製して詳細に検討したところ,アレイ解析によって見出された因子はTNF類似の因子であり,TNFの部分作動薬様の作用形式を示すことが明らかとなった。加えて,この因子の作用に対してAGEは干渉することも明らかとなった。これらの知見は,AGEと他因子との複合体形成を示唆するものであり,各因子間の相互作用による炎症応答の変化などの病態生理学的意義の一端を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに見出したAGE相互作用因子の生物活性について,起炎性活性を別の評価系を用いて広範に解析すると共に,既に複数個の相互作用因子の存在を見出しているので,複合体を構成するこれら因子の種類の違いによる細胞応答の変化を検討し,組織リモデリングの発症・増悪化における病態生理学的意義について究明していく。実際には,組織リモデリング病態モデルや培養免疫細胞を用いた起炎性評価,病態局所における複合体形成の可視化,重症度との相関性などの検証を,細胞レベル・個体レベルの両面から検討していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を当初の見込みよりも円滑に進めることができ,データ取得のための細かな条件設定の必要性が最小限度で済んだことや試薬等の物品購入の値引きも重なったために,次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
主たる研究課題として掲げている起炎性複合体の病態生理学的意義をより詳細に究明するために,免疫組織学的解析のための抗体類等を充実させ,より広範な視点を持って研究に精励する予定である。
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