研究課題
大麻に含まれるΔ9-tetrahydrocannabinol(THC)は、生体内の大麻受容体を刺激し、不安、驚愕、うつ様行動などの情動を伴う行動に影響を及ぼす。そして、情動は食行動において、食の好みを決定し、摂食行動を実行するために重要な役割を持つ。そのため、大麻受容体とその内因性リガンドは食行動に対し、生理的な役割を果たしていることが予想される。しかし、その詳細は明らかとなっていない。本研究課題は偏食が大麻受容体とその内因性リガンドをはじめとする脳内環境に与える影響を解明し、その仕組みを応用した創薬を目的としている。我々は食習慣(偏食)が食の好みと大麻受容体やその内因性リガンドをはじめとする脳内環境に及ぼす影響を解析した。その結果、高脂肪食を摂食し続けた時、脂肪を好む性質(食の嗜好性)が形成され、この食の嗜好性形成過程に内因性カンナビノイドが関わることを明らかにした。また、高脂肪食を摂食した動物について、内因性カンナビノイドである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)量や脳内環境が高脂肪食摂食期間に伴い変化することが明らかとなった。さらに高脂肪食を与え続けた動物を解析した結果、偏食によって引き起こされた内因性カンナビノイドを含む脳内環境の変化はもとに戻りにくいことが示唆された。以上のことから、偏食によって、大麻受容体を介した経路を含む脂肪嗜好性を形成する過程は複雑で進行的に変化しており、今後、複雑で進行的な脂肪嗜好性形成時の脳内環境を解析することで、摂食調節機構が破たんした摂食障害などを改善・発見するのに役立つことが期待された。
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Psychopharmacology
巻: 234 ページ: 3475-3483
10.1007/s00213-017-4735-1