研究課題/領域番号 |
15K08610
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 守 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20401002)
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研究分担者 |
小川 祥二郎 東京理科大学, 薬学部, 助教 (30546271)
野村 文夫 千葉大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80164739)
西村 基 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (80400969)
東 達也 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90272963)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | LC-MS/MS / Vitamin D / Estrogen / 同時定量 / 臨床検査 |
研究実績の概要 |
臨床検査においてステロイドホルモン等の低分子代謝物の測定は抗体を用いた免疫学的測定法で行われてきた。しかしながら、この方法では結合タンパク質との解離方法の違いや、使用する抗体によって類似構造体の認識能が異なることから、各施設間で測定値が異なるという問題が起こっている。低分子代謝物は微細な構造変化でその生理活性が大きく異なることから、正確な測り分けが求められる。 そこで本研究では、この分野でイオン化効率の悪さから最も測定が難しいとされているビタミンD・エストロゲンを対象として、LC-MS/MSを使用した定量測定法を臨床検査に応用することを第一の目的として行う。また、臨床検査において求められる非常に高度な精度・再現性・堅牢性を兼ね備えた測定法を確立するとともに、測定キットの開発を行っていく。 現在までにビタミンD・エストロゲンを対象とした測定系の確立することに成功している。今後はこの測定系の運用を目指した検証を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はLC-MS/MSを用いた定量測定法の各パラメーター標準品を使い最適化を行っていくことを目標とし、①分析対象物質の純品を入手:高純度な標準品、安定同位体標識物を購入し各物質のモル吸光係数、吸光度Min/Max比から濃度・純度を検定する。②質量分析計の各種パラメーターの最適化:インフュージョン測定を行いイオン化効率の高いイオン源の選択し、温度、ガス圧、レンズ電圧等を設定。後にトランジッションを決定する。③HPLCにおける各種パラメーターの最適化:最適な溶媒を選択し、測定項目の全てがキャリーオーバー無く分離できるカラム・グラディエント条件を設定する。④分析対象物質の抽出法の最適化:対象物質の性質・夾雑物質の影響に合わせて選択する。安定同位体標識物を各方法の抽出前後で血清にスパイクし測定する。内在性に対する標識物の回収効率から抽出法を最適化する。この工程においてもスループットを上げるために96wellフォーマットのプレートで処理を行う。①~④を行うことで測定系を立ち上げることは出来るが、各ステップ間でお互いに影響し合うパラメーターがあるので、ステップが進んでも1つ前の項目についても、更に最適化を行っていくことが重要である。特に実検体(血清)の分析では夾雑物の影響等により感度の低下や分離の劣化等が起こるので、④後の実検体を用いた最適化が重要である。 以上の流れで研究を行い、VitaminDの4代謝物・Estrone, 17beta-estradiolの2つの同時測定系を確立することができた。また標準血清を用いた測定系の検証も行うことができており、当初の計画より進展している。現在、Estrone, 17beta-estradiolの同時測定系については附属病院臨床検査部との相関取りを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
⑤測定系の検証:④までで作成した方法が実際に臨床検査で使用できるかさらに検証を進めていく。I:検量線作成にはチャコールフィルター処理した血清に標準品をスパイクしたキャリブレーターを用いる。安定同位体標識物を加え実検体と同様に抽出・測定し、標識物と標準品の面積比から検量線を作成する。III:これまでの免疫学的測定法との相関をとる。V:リファレンスラボ(同位体希釈質量分析法)との相関をとる。 ⑥臨床検査としての精度管理・運用管理:臨床検査は国、地域、施設を問わず同じ検体であれば測定値が同じである必要性から、国際的な標準化が進んでいる。臨床検査室の国際標準規格であるISO15189取得が推進されており、日常の精度管理はもちろん、外部機関による精度管理への参加が求められている。そこでI:全ての手技・方法の文書化を行う。II:測定毎に検量線の作成、QCサンプルの測定を行い適切な精度管理を行う。III:使用する試薬の安定性、ロット間の評価を行う。IV:全ての測定の履歴を残し、機器の感度チェック・メンテナンスを行う。以上の4点を行うことで本研究期間内、それ以降についての測定の安定性を確保していく。 ⑦検査値の利用に向けて:本研究で測定可能となるビタミンDでは1,25(OH)2D3(活性型)が保険収載されており、基準値が存在しているが、その他の項目については明確に測り分けた場合での値は存在しない。これについては健常人血清を使って測定することで、様々な年齢・性別での基準値の設定を学会で提案していく。 エストロゲン測定で10pg/mL以上の値については免疫学的測定法との相関を取り、必要に応じて換算式を設定することで利用が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
順調に研究計画が進められたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降は大規模な検証を実行する為、速やかに執行できると考えている。
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