研究課題/領域番号 |
15K08613
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 浩靖 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00631201)
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研究分担者 |
木原 進士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20332736)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高中性脂肪血症 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
脂質異常症については、スタチンをはじめとする様々な薬剤を用いた有効な治療戦略が示されてきている。しかし、重症脂質異常症症例の中には病因が不明で治療抵抗性のものが多く存在し、その1つに自己免疫性脂質異常症が想定される。そこで本研究では、まず当研究室で発見されたlipoprotein lipase (LPL)あるいは apolipoprotein C2 (apo C2)に対する自己抗体に伴う高中性脂肪血症症例を中心として、自己免疫性脂質異常症の診断法を確立することを目的とした。市販の抗LPL抗体については免疫沈降に用いることができなかったため、免疫沈降 (IP)及びウエスタン・ブロット(WB)に使用可能な抗体の存在したapo C2を中心とした研究を行った。膜に転写したリコンビナントapo C2タンパクに患者血清を添加し、血清中に存在する自己抗体を検出するリガンド・ブロット法 (LB法)については、当初予定していたリコンビナントapo C2の精製に困難を極めたため、この方法での自己抗体の検出とその半定量検査は現段階では十分に解析できていない。そのため、これまでに確立したIP法、WB法を組み合わせた自己抗体検出法を用いて自己抗体の存在を証明することとした。一方、抗apo C2自己抗体をスクリーニングする目的で開発中のELISA (Enzyme-linked immunosorbent assay)法を用いて多数検体を調査したところ、吸光度が高値を示す症例が複数認められ、各種クラスの自己抗体の存在が示唆された。ELISA法で吸光度高値を示した症例では、幾分の乖離は認めるものの、血清のIP-WB法にて同じクラスの自己抗体の存在が証明され、本ELISA法がスクリーニングに有用であることを示す結果が出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多数の患者検体を用いた自己免疫性高中性脂肪血症の調査は従前にも行われているが、診断法に使用されている脂質代謝関連抗原が適切でないものが多く、診断の信頼性には疑わしいものが多い。今回、我々が解析に用いた複数の高中性脂肪血症症例では、血清中に存在する内因性の抗原に自己抗体が付着していることが証明されており、自己免疫的機序を正しく証明できたものと考えた。そこで、様々な疾患に合併する高中性脂肪血症に於ける自己抗体陽性率を調査するため、新たに連携した市中病院での倫理委員会の承認を得て、200例程度の生活習慣病患者及び人間ドック受診者の臨床検体を確保し、我々の開発したELISA法を用いて自己抗体の存在を調査している。現在は、自己免疫性脂質代謝異常の合併が多いことが知られる自己免疫疾患症例についても検討を行うため、免疫内科との連携を行うべく倫理委員会への申請を行なっているところである。 今回のELISA法では、ELISAプレートの固相化抗原としてapo C2タンパクの脂質結合部位、LPL活性化部位の合成ペプチドを使用した。これまでに行なったこのELISA法による検索では、吸光度の高値症例では、IP-WB法でもapo C2に特異的に結合するIgG, A, M各クラスの免疫グロブリンが検出されており、本ELISA法の有用性が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
今回我々の開発したELISA法で吸光度が高値を示した症例では抗ApoC2自己抗体が存在していることが明らかとなったため、本ELISA法が有用であることが示されたものの、吸光度のカット・オフ値についての検討が必要不可欠と考えられた。そのため、健常人の検体を用いて同様のELISA法での検討を行い、その解析から適当なカット・オフ値を設定する。さらに、より明確に「自己抗体陽性者」をスクリーニングできるようなELISA法の確立を目指して、実験条件の変更・改良を行う。 続いて、自己免疫性疾患やメタボリックシンドロームに関わる各種生活習慣病症例の検体を用いて自己抗体の存在を調査し、自己免疫性脂質異常症の実態を調査する。また、得られた自己抗体の脂質代謝における役割を、分子生物学的手法を用いて解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、「リガンド・ブロッティング法による自己抗体の検出」を予定していたが、リコンビナントapo C2タンパクの精製に苦慮している。そのため、この関連実験に関わる物品に変更が生じ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度については、再度リガンド・ブロッティング法に用いるリコンビナントタンパク精製にチャレンジする。また、自己抗体を検出するELISA法に用いる臨床検体数が当初よりも増加しており、その解析費用にも充填する予定である。
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