当初より継続して行なっている生活習慣病患者と人間ドック受診者の臨床検体を用いたapolipoprotein C2 (apo C2)に対する自己抗体の検出のうち、apo C2ペプチドに対する自己抗体の解析は終了した。全症例での解析では、apo C2ペプチドに対する抗体価と中性脂肪との明確な相関は認められなかったが、レムナントとの関連が検出された。従って、本自己抗体はレムナント代謝に作用し、動脈硬化に対する影響を与えることが想定された。尚、全長のapo C2蛋白を抗原とする自己抗体の検出については、大腸菌からのapo C2リコンビナントタンパクの抽出・精製に苦慮している。今後、apoC2過剰発現HEK293細胞の培養液中に分泌されたリコンビナントapoC2タンパクを精製して抗原として用いる系の作成を試みる。 また、糖尿病患者症例を対象としたapo Bタンパクに対する自己抗体の意義について解析した。糖尿病合併症のうち、細小血管合併症と抗apo B自己抗体値との関連は認めなかったものの、動脈硬化疾患の有無との関連が認められた。この両者の関連は投与されている各種薬剤に依存しなかったため、薬物治療により血清脂質レベルが低下・正常化している症例の中から動脈硬化リスクの高い症例を選択する上で有用なマーカーとなる可能性が示唆された。この内容については現在英文雑誌に投稿中である。 さらに、脂質異常症を合併した自己免疫疾患患者を対象として、脂質代謝に関わる種々の分子に対する自己抗体もELISA法で測定しており、その意義についても解析中である。 また、重篤な脂質異常症を合併した小児科や内科疾患の紹介を受け、自己抗体の存在・その抗体の生化学的機能解析を行い、その結果は現在英文雑誌に投稿中である。
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