研究課題/領域番号 |
15K08614
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高谷 具史 神戸大学, 医学研究科, 客員准教授 (60714665)
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研究分担者 |
篠原 正和 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80437483)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 石灰化病変 / 画像診断 / メタボローム |
研究実績の概要 |
(1)大動脈石灰化病変の包括的かつ定量的評価手法の確立 CT 検査の解析において、大動脈石灰化の 3D イメージを自在かつ簡便に再構築できる汎用可能な方法を確立し、石灰化の分布および CT 値を評価することで、部位別の評価が定量的に可能となり、観血的な手技に際して、より具体的な情報提供が可能となり、臨床現場へも有用な情報提供が行えるようになった。 総石灰化量や部位 別の石灰化の程度の評価に加えて、胸腹部大動脈の石灰化の意義、大動脈石灰化と虚血性心疾患 や弁膜症との関連、カルシウム、リン代謝との相関について検討を行ってきた。これらの検討結果は、Clin Anat. 2015 May;28(4):494-505, J Cardiovasc Electrophysiol. 2015 Jul;26(7):705-12, Clin Anat. 2016 Apr;29(3):342-52, Clin Anat. 2016 Apr;29(3):364-70, Clin Anat. 2016 Apr;29(3):353-63, Circulation. 2015 May 19;131(20):e476-9等に論文報告した。 (2)大動脈石灰化病変に相関するヒト血液中低分子代謝物プロファイルの確立 研究計画(1)にて大動脈石灰化病変のCT画像評価を受ける症例において、空腹時採血を行い、 血清サンプルを低分子代謝物プロファイルに用いた。大動脈石灰化病変量に相関する複数の代謝物が検出されているが、統計学的検討・再現性検討のためには、さらに症例数を重ねる必要がある。検討結果の一部は、J Cardiol. 2016 Oct;68(4):308-15として論文報告した。 (3) in vitro 石灰化モデルに相関する低分子代謝物プロファイルの探索 ヒト間葉系幹細胞を骨芽細胞誘導させる培養条件の検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年間の研究期間において、3つの研究計画、 (1) 大動脈石灰化病変の包括的かつ定量的評価手法の確立 (2) 大動脈石灰化病変に相関するヒト血液中低分子代謝物プロファイルの確立 (3) in vitro 石灰化モデルに相関する低分子代謝物プロファイルの探索 を立案した。(1)に関しては、関連する論文報告も順調に行えており、当初の計画以上の成果を上げているものの、(2)(3)において事前の予定より時間を必要としている状況である。総合的に判断して、進捗状況は「やや遅れている」に該当するものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画(2)大動脈石灰化病変に相関するヒト血液中低分子代謝物プロファイルの確立 研究計画(1)にて大動脈石灰化病変のCT画像評価を受ける症例において、空腹時採血を行い、 血清サンプルを低分子代謝物プロファイルに用いる。この代謝物プロファイルを変動係数、研究計画(1) で取得される定量的な大動脈石灰化病変体積を説明係数として多変量解析を行うことで、大動脈石灰化病変体積に関連する代謝物の組み合わせを抽出する。 研究計画(3)in vitro 石灰化病変モデルにおいて石灰化と相関する低分子代謝物プロファイルの確立 ヒト間葉系幹細胞を骨芽細胞誘導条件下に培養する。経時的にアルカリフォ スファターゼ活性を評価するとともに、石灰化の評価のためには、細胞に沈着したハイドロキシ アパタイトを蛍光染料によって定量する。これら の指標により、間葉系幹細胞から骨芽細胞への経時的な分化プロセスが評価できる。間葉系幹細 胞から骨芽細胞への分化過程において、経時的に細胞培養上清ならびに細胞ホモジネートを回収 し、ガスクロマトグラフ質量分析システムを用いた低分子代謝物(メ タボローム)解析を実施する。取得した多変量データに対し、骨芽細胞への分化度を説明変数と する多変量解析を実施し、分化に応じて経時的に変動する代謝物プロファイルを明らかとする。 研究計画(2)(3)で共通した変動を示す代謝物が同定されれば、それは石灰化病変の形成に特徴的な代謝パスウェイを反映したものと考えられる。変動した代 謝物の病理的意義を明確にするために、変動した代謝物の上流・下流に存在する酵素の siRNA/shRNAを用いたサイレンシング、ならびにplasmidを用いた過剰発現モデルを作成し、特定の代謝パスウェイの変動が石灰化病変形成に関わっていることを直接的に解明し、代謝という切 り口から石灰化病変の機序を解き明かす計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画(3) in vitro 石灰化モデルに相関する低分子代謝物プロファイルの探索 において、間葉系幹細胞培養に必要な試薬を発注していたが、国内在庫が欠品していた関係で納期が平成29年度にずれこみ、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒト間葉系幹細胞を骨芽細胞誘導条件下に 2 週間培養する。経時的にアルカリフォ スファターゼ活性を評価するとともに、石灰化の評価のためには、細胞に沈着したハイドロキシ アパタイトを蛍光染料によって定量する(Lozna OsteoImageTM 石灰化アッセイキット)。これら の指標により、間葉系幹細胞から骨芽細胞への経時的な分化プロセスが評価できる。間葉系幹細 胞から骨芽細胞への分化過程において、経時的に細胞培養上清ならびに細胞ホモジネートを回収 し、ガスクロマトグラフ質量分析システムを用いた低分子代謝物解析を実施する。取得した多変量データに対し、骨芽細胞への分化度を説明変数と する多変量解析を実施し、分化に応じて経時的に変動する代謝物プロファイルを明らかとする。
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