研究課題/領域番号 |
15K08618
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
竹内 啓晃 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (90346560)
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研究分担者 |
松村 敬久 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (10274391)
杉浦 哲朗 高知大学, 医学部附属病院, 特任教授 (50171145)
森本 徳仁 高知大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (60398055)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / 細胞分裂制御機構 / 形態形成 / minCDE / NO system / Coccoid / ファージ / H. pylori flora |
研究実績の概要 |
強酸性胃内に慢性持続感染するピロリ菌はgenetic diversityが著しく環境適応により様々なmutantsが出現しmassとして生存(H. pylori flora)すると考えている。さらにその特殊な環境下で生育できるピロリ菌ゲノムは大腸菌の約1/3程度で他細菌と異なる固有機能を有すると推察できる。 実際に動物・ヒトでの慢性持続感染によりピロリ菌の変異株の出現は報告され、我々が見出した細胞分裂関連遺伝子cdrAの欠損株も出現しmassとして叢形成している。そこで、細胞分裂(制御)関連遺伝子minC,D,E, ftsZ遺伝子を中心にその固有機能を解析した結果、1. minDはNO system(染色体上でのFtsZ集積・polymerizationを阻害する制御機構:nucleoid occlusion system)に関与すること。2. minCはFtsZ凝集(Z-ring polymerization)に関与し、minC, D共に細胞中心部での分裂に必須であること。3. minEはピロリ菌のPCD(programmed cell death)と考えられるcoccoid形成に関わるが、分裂部位(中心部)の決定因子ではないこと。4. minCはFtsZの分解・安定性にも関与することを見出し、ピロリ菌固有の細胞分裂機序を世界で始めて明らかした(国際誌掲載)。 また、genetic diversityに関わるファージの影響をファージ感染NY43株にて解析した結果、ファージの脱落したcure株ではらせん状形態から直線的な形態に変態し、運動性が低下していた。また、病原遺伝子cagAにも影響(挿入・欠損)している可能性を見出した。このようなcure株の自然出現割合(約10%)も明らかとなり、ピロリ菌の変異株出現(H. pylori flora)が宿主へ様々な影響を及ぼしている可能性が強く示唆され、細菌―宿主間の生物学的動態を解析する予定である。 さらに、H. pylori floraを直接的に証明するため患者検体から複数のコロニーを獲得しこの生物学的多様性の解析も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ピロリ菌固有の細胞分裂機序の解明については抗体作成や各種遺伝子破壊株の作成およびそれらを使用したIP-WB解析がman powerの影響もあり予想以上にスムースに進行したため。また、ファージのピロリ菌への生物学的影響に関する研究もファージ脱落株が予想以上に獲得できたため。
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今後の研究の推進方策 |
ピロリ菌固有の細胞分裂機序(特にピロリ菌minC, D, Eの固有機能の解析)に関する研究成果の国際誌掲載に続き、ファージに関する研究も国際誌にacceptされた。 細胞分裂機序ではminEのcoccoid形成過程での役割が未だ不明であり、ファージ感染に関しては宿主菌であるピロリ菌への直接的な生物学的影響が不明である。これらの解明を目的に継続して研究を推進し、当初の研究計画にも挙げたピロリ菌の多様性(mutants出現とその胃内感染様態: H. pylori flora)の解析から病態との関連性の解明へ今後展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果は予想以上に挙げることができた。しかし臨床検体を使用した直接的なH. pylori flora解析は関連医療機関からの紹介患者数(想定以下)の影響もあり予算の一部は持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、紹介患者数も計画的に増えており、H. pylori flora解析研究の進展は十分に期待できる。その解析研究予算として計画的に執行する予定である。
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