研究課題
ライソゾーム病の一つであるポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ(AαGlu)の遺伝的欠損に起因する遺伝性代謝異常症で、Ⅱ型糖原病とも呼ばれている。2007年、本症に対する根治療法として酵素補充療法が承認されたことから、簡便で信頼性の高い早期診断法の開発が求められている。申請者は、これまで血液濾紙による新生児マススクリーニング法の開発を行う中で、日本人健常新生児の約4%がアジア人固有の遺伝子多型(c.1726G>A; C.2065G>A)のホモ接合体(AAホモ接合体)であり、その一部が患者群の活性値と重なることを報告した。また、血液濾紙を用いて酵素診断する際に反応系に共存するヘモグロビンの影響を受けないBa/Zn法を確立し、ポンペ病患者とAAホモ接合体の分離を顕著に改善した。これらの技術を組み合わせて、日本人(アジア人)のためのポンペ病の新生児スクリーニングシステムを構築し、2013年4月より2016年11月まで熊本県(一部福岡県含む)を対象に、本症の新生児スクリーニングを開始し、現在までに103,204例の新生児を調べ、遺伝子解析の成果も含めて3例のポンペ病を同定した。現在、それらの症例は経過観察が行われている。培養線維芽細胞による確定診断の結果、その活性値は遅発型ポンペ病と同程度の症例も10例認められた。このことから、原因不明の神経・筋疾患(成人)の中に、多くのポンペ病が潜在していることが強く示唆された。そこで、明らかに神経・筋疾患の症状を持つ患者で確定診断がされていない症例からポンペ病を掘り起こすため、病理組織用に作製されたスライドグラス上の筋組織凍結切片を用いた酵素診断法を確立した。その方法を用いてハイリスクスクリーングを実施した。その結果、偽低値を示す症例が非常に多く、その原因の多彩であることから、今後更なる技術の改良が望まれた。
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Journal of Human Geneticis
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