研究課題
本年度は、課題研究達成のために、脂質代謝酵素の一つ肝性リパーゼ(HTGL)を簡便に測定できる系を確立した。従来HTGLはヘパリン静注後血漿(PHP)を試料として測定したが、血清中HTGLを測定できればはるかに多くの試料を採取しHTGLの臨床意義を明らかにできる。そこで血清中HTGLに反応する新しいモノクローナル抗体(MoAbマウス9A1、MoAbラット141A1)を開発し、血清HTGL蛋白量測定用ELISAシステムを確立した。方法:FLAG-epitope tagを3 '末端に付加した後、PCR産物をpcDNA3.1(+)発現ベクターに挿入した。HEK293をhHTGL plasmidでtransfectionし、安定な発現系を確立するためにG418で選択した。 得られたHTGLをBALB / cマウスまたはWisterラットに皮下注射し免疫した。MoAbの特異性を確認するために免疫沈降 - 免疫ブロッティング分析を行った。 臨床的意義を検討するため冠動脈疾患を有する42名の男性被験者の血清脂質、HTGL蛋白量測定を行い、それらの相関性を検討した。結果:MoAbマウス9A1およびMoAbラット141A1はいずれも、組換えHTGL、PHP-HTGL、血清HTGLを免疫沈降させた。このELISA法は、アッセイ内およびアッセイ間で変動係数が6%未満であり、リポ蛋白リパーゼまたは内皮リパーゼと交差反応しなかった。被験者の臨床分析では、血清HTGL濃度とPHP-HTGL濃度との間に強い正の相関があった(r = 0.727、p <0.01)。血清HTGL濃度は血清TG(r = 0.314、p <0.05)とALT(r = 0.406、p <0.01)との間に正相関を示し、LDL-C、small、dense LDLおよびγGTPと正の相関傾向を認めた。
2: おおむね順調に進展している
本課題研究を達成するためにHTGL酵素蛋白量測定の系を確立することは必須である。この系の確立により血清中のHTGL測定が可能となる。従来はHTGL測定試料としてヘパリン静注後血漿を用いたため検体採取がはるかに複雑であった。
リポ蛋白リパーゼ(LPL)、血管内皮リパーゼ(EL)測定系はすでに確立、キット化されている、これに血清HTGL測定系が加わることになる。今後は家族性高コレステロール血症(FH)患者から血清を採取しその動脈硬化進展度とこれら3つの脂質代謝酵素との関係解析を更に進展していく。
LPL測定キットを購入する際、当初予定していた個数購入よりも1個(100,000円相当)少なく研究を達成できたことが大きな理由である。
新年度開始後比較的早い時期にLPLキット購入を再開し、研究にとりかかる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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