研究課題/領域番号 |
15K08628
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
菅田 健 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (60454401)
|
研究分担者 |
井平 勝 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 教授 (10290165)
三浦 浩樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10751761)
工藤 寿子 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (20303620)
吉川 哲史 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80288472)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ロタウイルス胃腸炎 / 弱毒生ワクチン / ワクチン未接種者、既接種者 / 血清中ロタウイルス抗原量 / ロタウイルスゲノム量 / 疾患重症度(Vesikari scores) / 抗原血症 / 遺伝子型 |
研究実績の概要 |
ロタウイルス(RV)胃腸炎については現在2種類の弱毒生ワクチンが開発され、わが国でも2011年末から臨床現場へ導入されている。任意接種ではあるが地域差はあるものの70-80%に接種率が上昇してきている。この接種率増加に伴いRV感染症が減少してきている。 当面ワクチン未接種者、ワクチン既接種者のRV性胃腸炎患児が混在することが予想される。我々はワクチン導入前からRV胃腸炎により入院した患児から血液や便などの臨床検体を採取しており、今後も同様のサンプルを取集することでRVに対して免疫のある患児とない患児双方からの検体採取が可能となる。 1.疾患重症度と血清中RV抗原量、ウイルスゲノム量の相関性:RV胃腸炎患児の重症度を、世界的に認められている下痢承重症度のスコア(Vesikari scores)に従い評価し、胃腸炎としての重症度と急性期患児血清中RV抗原量、ゲノム量との相関性を明らかにする。 2.初感染時と再感染時の血清中RV抗原量、ゲノム量の相違:各対象においてRV接種歴を確認するとともに、急性期血清中RV抗体価を測定することでワクチン接種者あるいは既感染者に分け、各群間での疾患重症度や血清中ロタウイルス抗原量、ゲノム量を比較する。これにより、宿主免疫がRV感染症の重症度軽減、さらには抗原血症の抑制に効果があるか解明する。また近年これまでに流行していなかったRV遺伝子型が散見されるようになってきたため分子疫学的解析も重要である。 3.現在RVはAからG群までの血清型が知られているがそのうちヒトに感染するのはAからC群までである。毎年流行するAに対しC群は散発例があることが知られている。しかしながら現行のRV迅速診断キットでは検出されないため実際の流行状況や疫学ははっきりわかっていない。そこで急性胃腸炎患児におけるC群RVの検出状況を調査する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
貴重な2症例の分子疫学的解析を行った。 症例1はRVワクチン(RV5)接種後下痢が遷延し、その後X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)と診断された患児にから採取した検体をウイルス学的解析を行った。RV5を三回接種後31日目(day0)から頻回の下痢が遷延、体重減少の精査中にX-SCIDと診断された。下痢は遷延したが、第135病日に臍帯血移植を受け症状は改善した。便、血清についてRV5の5つの遺伝子型特異的リアルタイムRT-PCRを実施した。便では第88~159病日、血清では第46~145病日の検体からG1遺伝子型RVゲノムが検出され、移植後は陰性化していた。便でPAGE解析を行い、NSP5遺伝子を含む複数の遺伝子分節に変異バンドが認められ、この部分から抽出したRNAの遺伝子解析よりリアレンジメントを確認した。この症例において、便だけでなくRNA血症も長期間持続すること、また長期間のウイルス増殖によると思われるRV5の遺伝子リアレンジメントを証明できた。 症例2はRV胃腸炎で入院したRV1ワクチン接種歴のある4歳男児。RV胃腸炎のVesikari重症度スコアは9点で中等度であり、嘔吐、下痢および発熱をみとめたが4日間の入院で改善した。採取した便からRNAを抽出し解析した。G、P遺伝子型は、VP7、VP4遺伝子をRT-PCRで増幅後、PCR産物を直接シーケンスし同定した。NGSはMiSeqを使用して11分節のRV全ゲノム塩基配列を解析。RT-PCRの結果、RVはG8P[8]株であることが判明した。NGS解析により得られた11分節の遺伝子配列について分子系統樹解析し、10分節は以前に報告さたDS-1-like G8P[8]株に類似していたが、VP1セグメントがタイなどで検出された同株とは異なるクラスターに属していた。これによりVP1分節のみリアソートメントを起こした株と考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
まず上記2症例の論文化を進めている。 RVワクチンの普及に伴いRV胃腸炎に罹患する患児は年々減少し、罹患しても軽症のことが多い。そのため研究における検体数を増やすことが困難になってきている。そのため再度関連病院への検体採取の強化を呼びかけ便、血液、髄液検体数の増加を最重要課題として目標に掲げる。RVはワクチン導入以前には幼小児期に罹患する代表的な胃腸炎であったが、近年は学童期の罹患者数も増加している。そこで学童期や高学年時からの検体採取も心掛けるようにする。 各実験が順調に進んだ場合、最終的には各年度のデータを年度別に解析することやRVワクチン接種群、未接種群などの両群間の比較を行うために統計解析をする予定である。統計学的解析の際にはばらつきの少ないデータを作成することで信頼性の高いデータ構築したい。 しかし患者数の低下に伴い大規模な研究計画が出来ない場合にもRV胃腸炎の重症例や合併症例の報告も重要である。また遺伝子型の解析はワクチン導入後の変化を見るうえや今後の流行株の推移を把握するためにも大変重要であるため分子疫学的解析も必要である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
RVワクチンの普及に伴いRV胃腸炎に罹患する患児は年々減少し、罹患しても軽症のことが多い。そのため研究における検体数を増やすことが困難になってきている。そのため再度関連病院への検体採取の強化を呼びかけ便、血液、髄液検体数の増加を最重要課題として目標に掲げる。RVはワクチン導入以前には幼小児期に罹患する代表的な胃腸炎であったが、近年は学童期の罹患者数も増加している。そこで学童期や高学年時からの検体採取も心掛けるようにする。各実験が順調に進んだ場合、最終的には各年度のデータを年度別に解析することやRVワクチン接種群、未接種群などの両群間の比較を行うために統計解析をする予定である。統計学的解析の際にはばらつきの少ないデータを作成することで信頼性の高いデータ構築したい。 しかし患者数の低下に伴い大規模な研究計画が出来ない場合にもRV胃腸炎の重症例や合併症例の報告も重要である。また遺伝子型の解析はワクチン導入後の変化を見るうえや今後の流行株の推移を把握するためにも大変重要であるため分子疫学的解析も必要である。 進捗状況でも述べた通り延長申請を希望し上記の目標を今年度も上記に上げたものを遂行していきたい。
|