研究実績の概要 |
診断用抗体は, 主にハイブリドーマ法で調製されているが, 遺伝子操作により更に優れた結合能を持つ改変抗体が得られるものと期待される. 適当な抗体を低分子量の一本鎖Fvフラグメント (scFv) に変換したのち遺伝子レベルでランダム変異を導入し, 生じる多様な分子集団 (ライブラリー) のなかから改良分子種を「パンニング」により選択し単離するものである. その過程で抗体をファージ粒子の表面に発現させるファージ提示の手法が活用される. しかし, 現状では選択効率に難があるため多大の労力が必要で, 抜本的な改革が切望される. 本研究では, マイクロアレイの原理に基づいて改良型scFvを提示するファージあるいは提示ファージ産生菌を個別かつ網羅的に解析する新規な選択・単離法を開発している. 昨年, 後者のシステムを構築し,エストラジオールに対する変異scFvのミニライブラリーの探索に応用したところ, 在来のパンニングでは得られなかった高親和力scFvクローンが多数得られ, 期待通りの効果があることが示された。そこで本年度は,コルチゾール (CS) を認識するscFvのライブラリーを新たに構築し, 同選択シムテムを用いて親和力の向上したscFv変異体の探索を試みた.まず, 先に確立したマウス抗CS抗体の可変部遺伝子 (VHおよびVL)をクローニングして連結し, 野生型scFvを構築した.ついで, error-prone PCRによりその遺伝子全域にランダム点変異を導入し, 変異scFv遺伝子のライブラリーを構築した. これを上記の選択システムに付したところ, 野生型scFvに比べ10倍以上大きなKa値を示す変異scFvが4種得られた.これらの高親和力変異体は従来のパンニングでは得られておらず, 我々が開発した新しい選択法の有用性が実証された.
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