研究課題/領域番号 |
15K08630
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60351798)
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研究分担者 |
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
藤原 範子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10368532)
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30508958)
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 |
研究実績の概要 |
インターロイキン18(IL-18)は炎症性サイトカインであり、感染症においてIFNgの発現誘導に関与する。一方で糖尿病患者血清中での増加も認められることから、増加したIL-18により免疫反応が誘導され、過剰な免疫反応の惹起により糖尿病性腎症などの合併症を発症する可能性が考えられる。また、糖尿病では酸化ストレスが増加し、発生した活性酸素種による組織傷害も合併症の一因となっている。本研究の目的は、糖尿病におけるIL-18と、活性窒素種である一酸化窒素(NO)との関連を解明し、新たな糖尿病疾患マーカーとしての有用性を検討するものである。 これまでの検討において、IL-18のニトロ化部位を特定し、ニトロ化IL-18を作製した。ニトロ化されたIL-18はKLHをキャリヤタンパク質として用いてウサギに免疫し、抗血清を得た。さらに抗体成分を精製したが、現在得られているニトロ化部位に対する反応性のある抗血清は反応性が低かったため、今後も引き続き特異的に反応する抗体を分離する予定である。細胞を用いた検討では、ペルオキシ亜硝酸イオンによるIL-18 mRNAの発現誘導やインスリンシグナルの低下など、NOとIL-18による糖尿病の病態への関与を見出している。また、これまでの検討ではマウスのIL-18であったが、ヒトのIL-18でも検討した結果、同様の現象が認められることが確認された。今後さらに、ニトロ化IL-18と糖尿病の病態との関わりをさらに検討していく予定である。 ニトロ化低分子化合物の検出もHPLCにより行い、一部は質量分析計によりおおよその構造がわかってきた。今年度はさらにこの結果をもとにNMRで構造決定し、酵素学的特性や病態との関わり、さらに抗体作成などを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ニトロ化IL-18に対する抗体の作成および一酸化窒素(NO)とIL-18の関連を明らかにし、IL-18の機能変化を解析してきた。抗体については抗血清から精製し、反応性が低いが以前より特異性の認められる抗体が得られた。今後も引き続き検討する予定である。また、これまでのマウス由来のIL-18を用いた検討結果をもとにヒトIL-18での検討も行い、同様の機能変化が起こることが確認された。糖尿病モデルマウスにおいて実際にニトロ化されたと考えられるIL-18が得られ、病態への関与がマウスにおいても認められた。 また、ニトロ化低分子化合物もHPLCでの条件検討がほぼ終了し、単独分子への分離にも成功した。引き続き、今後も詳細な構造決定および生化学的特性の解析も進めていく。 以上のことより、研究はほぼ予定通りに進行しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はニトロ化されたIL-18に反応する抗体を精製し、糖尿病マウス血清での検出系を確立することである。抗血清からの精製は抗原カラムを作成して行う。検出方法としては、まず特異性の確認法としてウエスタンブロッティングにより評価し、最終的にはELISAによる高感度検出系を確立することを計画している。この抗体作成実験に並行して、糖尿病におけるIL-18の役割解析も引き続いて行う。 ニトロ化低分子化合物では、生化学的特性の検討と同時に、NMRによる構造決定と抗体作成に進む予定である。これらの成果はまとめて論文として報告し、学会での発表も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ニトロ化分子をHPLCにより精製する作業がまだ終了していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
構造決定に必要な量のニトロ化分子をHPLCにより精製する作業に使用する。
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