研究実績の概要 |
AD患者(アルツハイマ病)進段階(各30~40人)につき、血漿ビタミンD(VD)値と重症度、男女差、年齢差などにつき解析した。25(OH)VD値は、AD早期段階(いわゆるMCI段階)より同年齢健常者より優位に低下しているが、1,25(OH)2VDでは有意差が認められなかった。男女差では、いずれも病期進行依存的に25(OH)VD値の低下が認められるが、この傾向は女性で特に顕著であった。一方、1,25(OH)2VD値は、男女を問わず、健常者と比較してあらゆる病期のAD患者で差が認められなかった。また、25(OH)VD値と1,25(OH)2VD値の相関関係の解析では、健常者では男女とも、全く相関が認められないが、AD患者では、男女とも、正の相関が認められ、特に女性で高い相関が認められた。また男女とも、病期進行のともに相関が強くなる傾向が認められた。これらの解析結果より、AD早期段階の発見には、血漿25(OH)VD値の低下が有用な血液マーカーになると考えられた。一般的にサプリメントとしてのビタミンは活性型である1,25(OH)2VDであるが、今回の研究結果では、健常者と比較して、血漿25(OH)VDには差があるが、1,25(OH)VD2値には両者に差がないことより、サプリメントとしての1,25(OH)VD2服用については疑問の余地があり、今後さらに大規模な臨床研究が必要である。あるいは、活性型1,25(OH)VDと前駆体である25(OH)VDとでは単に生理作用の強弱の差だけでなく、前駆体特有の生理学的作用がある可能性もあり、この点についても今後研究の必要がある。今年度計画していた標識VD化合物の作成は完成したが、マウスを用て抹梢から脳内へのVD投与後の経路追跡については、再現性のある研究結果が出ていない状況であり、今後も継続する予定である。
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