研究課題
LRP4抗体陽性MGとALS患者由来の血清群それぞれについて、agrinシグナル阻害活性を比較した。その結果、MG由来血清はagrin誘導性のAChR凝集活性をほぼキャンセルできたのに対し、ALS由来血清には同様の活性は全く認めなかった。この結果は、ALS患者体内で産生されるLRP4抗体のエピトープ特性がMG由来のLRP4抗体のそれと異なっていることを強く示唆した。この結果を受け、当初計画していたモデル動物の解析研究は中止し、ALSとMGで異なるLRP4抗体のエピトープ分布について、さらに詳細を分析する研究を進めた。既製品であり、抗体認識領域が自明のLRP4抗体群を数種類使用し、上記と同様の解析を進めた結果、agrinとLRP4が直接相互作用するとされる領域から結合部位が離れていると推測される抗体はいずれもALS血清と同様の結果を示した。すなわち、MGで産生されるLRP4抗体は、我々が2011年に報告したように、agrin-LRP4間のインターフェース、もしくは、その近傍にエピトープを有するものと推測された。この結果を受け、我々は、LRP4抗体がMGのみならず、ALSを含む多様な神経疾患に出現するという仮説を検証するべく、国内の複数の医療機関の協力を受け、神経免疫疾患のみならず、神経変性疾患由来の患者血清を集積した。そして、すべての血清に対して、LIPS法によるLRP4抗体検査を実施した。予想通り、対象とした神経疾患のほぼすべてでLRP4抗体の出現が確認されたが、agrin誘導性のAChR凝集活性阻害作用を示したのはMG由来の血清のみであった。以上の結果は、agrin-LRP4シグナルを阻害するLRP4抗体がMG患者体内で産生される特別なメカニズムが存在することを示唆する。
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Neuromuscular Disorders
巻: 27 ページ: 914, 917
10.1016/j.nmd.2017.06.001.