研究課題/領域番号 |
15K08637
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹羽 俊文 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90218248)
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研究分担者 |
林 慎一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60144862)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / ナノ材料 / エストロゲン受容体 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
27年度の研究は,主として膜型エストロゲン受容体(mER)発現細胞株樹立の試行とマイクロアレイによるエストロゲン応答遺伝子発現の網羅的解析を行った。 ・ER遺伝子上から核移行に必要なドメイン(NLS)を除去し,さらに脂肪酸が付加しやすい配列を挿入したコンストラクトを調製した。このコンストラクトを核内ER陰性の細胞に感染させ,mERのみを発現した安定細胞株の樹立を試みたところ,空ベクターでは問題なく導入されたが,ER発現ベクターでは導入が困難であった。引き続きベクターの導入条件を検討するとともに,宿主細胞側に問題がある可能性を考慮して,本来ER陽性(ルミナール型)で核内ERを消失したfulvestrant耐性株を樹立し,ベクター導入を試みている。 ・マイクロアレイを用いてエストロゲン応答遺伝子発現の網羅的解析を行い,本来のリガンドであるestradiol(E2;細胞内に侵入し核内ERに結合)とmER特異的リガンドであるQdot-6-E2によって発現が上昇した遺伝子を比較したところ,両者で応答遺伝子が異なることが明らかとなった。いずれにも応答した遺伝子は各々で発現上昇が見られた遺伝子のうち20-25%程度であった。 ・mERによって刺激を受けた細胞では,細胞内の主要リン酸化経路であるMAPK系,PI3K-Akt系のいずれもが亢進していたが,各々に対する阻害剤で細胞増殖の抑制がみられた。また細胞膜型受容体による信号経路に関与しているとされるsrcの阻害剤によっても増殖抑制がみられた。これらの結果よりmER刺激が両経路を経由して増殖にも寄与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の計画の主要部分はmER発現細胞株の樹立とmERによるエストロゲン応答遺伝子の解析である。 (1) mER発現細胞株の樹立を目的として,コンストラクトの調製を行い,細胞への導入を試みることができた。安定導入は果たせなかったが,ER陰性(非ルミナール型)細胞側の問題と考え,引き続き条件検討するとともに,新たな宿主としてルミナール型でER陰転化した細胞の樹立を試みている。 (2) マイクロアレイによってE2とQdot-6-E2によって刺激を受ける応答遺伝子群を網羅的に解析し,両者の転写応答が異なることを示した。 (3) 主たる細胞内リン酸化経路の活性化を確認し,阻害剤により細胞増殖が抑制されることを確認した。 以上,概ね27年度の計画に添って進展している。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は引き続きmER発現細胞の樹立を進めていくとともに,メカニズムを異にする種々のホルモン療法耐性モデル細胞株を利用し,mERが関与するシグナル経路の変化とホルモン療法耐性との関連について検討を行う。また,患者検体が入手できた際にはprimary cultureに対して選択的リガンドを添加して信号応答を解析し,実際の症例におけるmERの寄与について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は平成27年度の採択ではあるが,後期からの追加内定であり,乳癌学会,癌学会等の関連学会は交付決定前に終了しており旅費の執行が生じなかったため,次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に繰り越し,試薬,材料等の購入に有効活用する。
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備考 |
「こんな研究をしています」「学会発表」「学位論文・卒業研究」のページに関連の記載有り。
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