研究課題
29年度は前年度に樹立した膜型エストロゲン受容体(mER)発現細胞を用いてmER選択的リガンド(Qdot-E2)の作用を検討するとともに,mER信号経路の制御,ならびに特異的バイオマーカーの可能性について探索した。・ER遺伝子上から核移行に必要とされるドメイン(NLS)を除去し,さらに脂質が付加しやすい配列を挿入したコンストラクトを,本来ER陽性でありながら核内ERを消失したMCF-7 fulvestrant耐性株(MFR細胞)に導入した。この細胞のER発現状況を観察したところ,膜画分にも存在は認められるものの,細胞質により多く分布が認められた。また特異的リガンド,estradiol(E2)いずれによっても増殖は進展せず,抗エストロゲン剤の効果も認められなかった。MFR細胞ではERのみならず活性発現に必要な共役因子も消失しているためと考え,以下内因性ER陽性株で研究を続行した。・上記とは逆に脂質付加阻害剤である2-bromopalmitate (2-BP)を添加したところ,増殖抑制効果がみられた。この2-BPは通常の細胞株においてはER陽性,すなわちQdot-E2に応答する株において感受性がより高く,ERの膜移行に脂質付加が重要であることが示唆された。一方,ER発現を維持している各種エストロゲン枯渇耐性株間での差はみられなかった。・細胞内リン酸化の二大経路であるPI3K-akt-mTOR系とMAPK系それぞれに対する阻害剤を加えたところ,Qdot-E2に対する増殖応答は同程度に抑制され,いずれの経路も寄与していることが解った。このことからmERがホルモン療法耐性に関与している場合,PI3K系分子標的薬のみでは十分な効果が得られない可能性が示唆された。・特異的バイオマーカーについていくつかの可能性を見いだし,引き続き検討をすすめている。・現在論文を投稿準備中である。
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Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology
巻: 171 ページ: 209-217
10.1016/j.jsbmb.2017.04.001
http://www.mfd.med.tohoku.ac.jp