研究課題/領域番号 |
15K08642
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
仁井見 英樹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (50401865)
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研究分担者 |
北島 勲 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50214797)
野手 良剛 富山大学, 大学病院, 臨床検査技師長 (60377364)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 敗血症 / 遺伝子検査 / 迅速検査 / 起炎菌の定量 / Viability PCR |
研究実績の概要 |
本年度、我々はViability PCRを臨床応用し、患者検体中のMRSAを高感度で検出且つ生菌・死菌の判別を行うことで、MRSAに対する抗菌薬治療の効果をモニタリングできるようにして、MRSA感染症の治療に役立つ新たな検査を構築することを目的とした。
方法ならびに成績 本研究ではmecA遺伝子を標的としたnested PCR法を工夫した。mecA遺伝子を標的とすることで、MRSEのみならず、methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis (MRSE)や、methicillin-resistant Coagulase-negative Staphylococci (MRCNS)等、全てのメチシリン耐性菌を検出することが出来る。また、nested PCRを用いることで、高感度・高特異度の菌検出(LOD=8.1 CUF/mL)を行い、安定的なCt (Cycle threshold) valueが得られるようにした。更に、mecAプライマーは50サイクルまでdimerが生じないように設計し、no amplification(=死菌)を正確に確認できるようにした。 先ずViability PCRの性能評価を行うために、in vitroで抗菌薬(gentamicin, vancomycin, linezolid)のMRSAに対する効果判定を24時間、および12日間で行った。その結果、8時間後にvancomycinの感受性が確認でき、また、vancomycin投与6日目には全ての菌が死滅したことを正確に判定できた。次に臨床血液検体11検体を用い、Viability PCRの評価を行った。その結果、全てのMRSAが全て死菌である(= no amplification)と判定した検体は、培養法でもコロニーが生じなかった。但し、患者検体中(in vivo)での低濃度域のCt differenceの値は不安定であり、現プロトコールにおいて、抗菌薬の効果を定量的に判定するのは難しいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Viability PCRの臨床検体への応用についてはMRSAをターゲットとして検査系を構築し、実際に患者血液検体で試験運用を行った。その結果、実際の患者検体でのPMA試薬の使用は効果が不安定であり、現プロトコールではfalse-negativeの危険性が避けられないことが判明した。この点を見極めるために、今後はより検出感度を高めたプロトコールに改めて、再度の評価を行う計画である。 その他、定量検査のプロトコールは細部まで最適化を行い、生菌・死菌の判定を行わないのであれば、正確な起炎菌の定量検査が行えるところまで達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
メチシリン耐性菌を標的としたViability PCRの報告は今迄に無く、また、臨床検体から直接、生菌・死菌を判定するViability PCRの臨床応用も未だ報告されていないため、本研究は臨床におけるViability PCRの初の挑戦的な試みである。患者検体中の微量な菌においてはCt valueが安定しないため、現時点では菌が完全に死滅したことの判定は可能と考えるが、生菌・死菌の割合を定量的に測定するには、感度を高めるなどのプロトコールの更なる改良が必要である。 今後は「生菌・死菌の判定」と「患者検体中の起炎菌の定量測定」を2つに分けて、それぞれを異なる達成目標として研究をすすめる。起炎菌の定量測定方法は概ね確立できたので、今後は患者検体で検証していく予定である。
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