研究実績の概要 |
今年度の進歩状況として、抗菌薬治療前後での菌数の経時的な推移を解析し、菌数が治療効果判定のためのバイオマーカーとして有効であるかどうかを評価した。対象患者は2017年7月1日から2018年3月31日までに富山大学附属病院全診療科で敗血症疑いと診断された成人200症例中、治療前の採血時に起炎菌がPCR検出された34症例のうち、更に治療前、抗菌薬投与後24時間、および72時間で採血を行った24症例。そして、その3ポイントで起炎菌迅速同定・定量検査と共に、体温、白血球数、CRP、プレセプシン、プロカルシトニン、IL-6を測定した。 菌数推移の解析の結果、敗血症治療経過の良好な症例の多くが、治療24時間後で菌数が治療前の半分以下,72時間後は1/4以下となった。治療経過不良な5症例においては、1症例(治療30時間後に死亡)を除いて、全て治療24時間後に菌量の増加を認めた。 他のバイオマーカーとの比較解析の結果、菌数は敗血症の治療経過良好を正確に反映するが、WBC, CRP, PCTは特に治療24時間後において必ずしも治療経過良好とは一致せず、逆に上昇する場合が多かった。また、敗血症以外の他の炎症性疾患を合併した場合、WBC, CRP, PCT, P-SEPは非常に影響を受けるが、血中の菌数はその影響を受けることなく、敗血症の治療経過を正確に反映した。IL-6は治療経過良好であれば治療24時間後に上昇することは無いが、治療経過不良の場合に菌数は治療24時間後に上昇するのに対し、逆にIL-6は減少してしまう。以上の結果を考慮すると、菌数は敗血症の治療経過を最も迅速・正確に反映するバイオマーカーであることが強く示唆された。
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