研究課題
・妊婦、外科手術患者、担癌患者などの血栓症発症リスクのある患者を、プロスペクティブかつ経日的に、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)波形、可溶性フィブリン(SF)、D-dimer、抗Xa活性ならびにthrombin-antithrombin complex (TAT)などの止血系マーカーを測定し、血栓症診断ならびに予測するためのカットオフ値を決定した。妊婦における血栓症発症リスクを示すD-dimerのカットオフ値は、約3.0μg/mlであった。整形外科全関節置換術患者での血栓症発症リスクを示すD-dimerのカットオフ値は約1.2μg/mlであった。APTT波形では、血栓症発症前に加速度高や速度高が著しく高値であった。・妊婦の血栓症ではantithrombin(AT)異常症が高頻度に認められた。また、妊婦ではAT、Protein C (PC)ならびにProtein S(PS)などの血液凝固阻害因子は、不育症のリスク因子にはならなかった。妊娠週数が増加するに従い、APTT波形の加速度高や速度高が著しく高値となった。フィブリノゲα鎖p.Thr331Ala遺伝子多型は不育症のリスクとなり、血栓性素因はそのリスクを軽減した。非定型性溶血性尿毒症症候群(aHUS)の遺伝子異常は、三重県ではp.Ile1157Thr変異が圧倒的に多かった。また、aHUSの診断に血漿C5b-9の測定は有用であった。・複数の播種性血管内凝固(DIC)診断スコアリングシステムの評価をおこなったところ、AT、SF/TAT、血小板減少を一般的止血検査に加えたスコアリングの組み合わせが、DIC診断における感度・特異度とも最も高かった。また、この新しいDIC診断スコアリングシステムはDICの早期診断も可能であったが、生命予後の予測に関しては画期的に改善するものはなかった。APTT波形はDICの病型分類にも有用であった。
3: やや遅れている
新たに、過凝固状態の指標として、APTT波形をを検討した。このため、機器の更新を行い、多数例の測定ならびに解析を行った。このため、期間の延長を必要とした。
・D-dimerの標準化あるいは換算式の検討を行う。さらに症例数を増加させ、Odds比を向上させる必要がある。D-dimer以外で、SF、FDP、CLEC2、ヒストン、HMGB-1などのdataを集積したい。・上腸管静脈血栓症や門脈血栓で、凝固阻害因子の蛋白ならびに遺伝子の検討を行う。フィブリノゲα鎖p.Thr331Ala遺伝子多型と血栓症との関係も調べる。・DICと生命予後、治療効果と生命予後との関係は充分解析されていない。治療を選択できるようなバイオマーカーを検討する。・aHUSで補体系の活性化が確認されたが、C5b-9のカットオフ値の決定など多数例での測定を行う。その他の、C5aやC3aなどの測定を行う。
予定した止血系分子マーカーの検討において、測定する過凝固症検体数の必要量が、当初の計画よりも少なく済んだため、平成30年度に行うAPTT波形や新しい分子マーカーの測定に使用する予定である。
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