研究実績の概要 |
当該年度の研究では、新規に開発された脂肪酸代謝阻害剤AvocatinBを用いた検討を行い、AvocatinBの急性単球性白血病(AMoL)に対する抗腫瘍効果を評価するとともに化学療法剤との併用効果とその作用機序について考察した。また、これまでの研究で抽出された標的マーカー候補(AMPK, ATF4)のノックダウン細胞を作成し、骨髄脂肪細胞との共培養下でAvocatinBの効果がどのように変化するかを検討した。 その結果、AvocatinBによる脂肪酸代謝抑制は、単独培養条件下のAMoL細胞に対してアポトーシス誘導効果を発揮したが、骨髄脂肪細胞と共培養したAMoL細胞ではグルコースの取り込みやFABP4 の発現上昇を誘導し、アポトーシス効果は減弱した。これらの現象は、脂肪酸代謝抑制に対する代償反応と考えられ、AMPKノックダウン細胞でアポトーシス阻害効果が減弱したため、AMPKシグナルが骨髄脂肪細胞存在下での白血病細胞の抗アポトーシス作用に寄与することが示唆された。一方、AvocatinBと化学療法剤シタラビン(AraC)を併用した場合、骨髄脂肪細胞と共培養下においてもAMoL細胞内で活性酸素の増加が認められ相乗的抗腫瘍効果が認められた。転写因子ATF4は、ストレス環境下でアポトーシス誘導性あるいはアポトーシス抵抗性の両方に作用することが知られているが、骨髄脂肪細胞共培養下でのAvocatinBとAraC併用によるアポトーシス誘導はATF4ノックダウンによって減弱したことから、ATF4がアポトーシス誘導性に作用していることが示唆された。 以上より、化学療法抵抗性のAMoLに対してAvocatinBなどの脂肪酸代謝阻害剤とAraCなどの化学療法剤の併用の有効性が示唆された。
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