研究課題
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia: AML)の治療において、抗がん剤に対する抵抗性は重要な課題である。本研究では、骨髄中に残存し再発の原因となる治療抵抗性の白血病細胞における抗がん剤耐性の分子機構を明らかにし、それに基づく耐性の評価システムの開発を目的とした。抗がん剤耐性獲得における骨髄中の細胞外マトリックスとの接触の役割を明らかにするため、FLT3-ITDを導入した株化培養細胞株K562 をモデル細胞とした。FLT3-ITD導入K562細胞は、ファイブロネクチンをコートした培養プレートにて培養した場合、Ara-C耐性が増強することが明らかとなった。ファイブロネクチン接着を特異的に抑制する抗β1インテグリン抗体の投与にて、Ara-C耐性は減弱した。FLT3-ITD導入K562細胞における遺伝子発現について、cDNA microarray 解析よる遺伝子発現プロファイルを行った結果、ファイブロネクチン遺伝子(FN)の発現上昇が見られた。以上より、FLT3-ITD陽性のAMLの治療抵抗性の機序として、骨髄微小環境の要素ファイブロネクチンを介した抗がん剤耐性の増強が示唆された。AMLにおける受容体型チロシンキナーゼ(receptor tyrosine-kinases: RTK)の活性化変異として、FLT3-ITD変異とともにKIT変異は治療予後不良と強く相関することが知られている。KITについて、臨床的に頻度多い4種の変異を有するplasmid DNA を作製し、株化培養細胞株HL-60またはU937に細胞導入し、野生型と比較した。その結果、KIT変異導入細胞において、Ara-C耐性化が確認された。さらに、Ara-C耐性化の機構として、薬剤の細胞膜輸送低下や 不活化をもたらす遺伝子発現変化が証明された。これらの結果は、RTKの活性化変異を有するAML細胞が治療後残存し抵抗性を獲得する分子機構を説明するものと考えられる。これら分子機構に重要な遺伝子は、AMLの治療抵抗性の診断と治療法の開発に貢献しうると考えられる。
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Int J Hematol
巻: 107 ページ: 201-210
10.1007/s12185-017-2340-z.