研究課題
当該年度までの検討で、化学発光免疫測定法( chemiluminescent immunoassay; CLIA)による、より自動化が可能なLn-γ2単鎖のアッセイ法を構築した。健常人ボランティア52例、慢性肝疾患(CLD: chronic liver disease)24例、肝細胞癌(HCC)症例57例におい て既存マーカーであるAFP、PIVKA-IIと比較して検討を行いより有用なバイオマーカーであることが明らかになった。Ln-γ2単鎖とPIV KA-IIの組合せは、これまで肝癌診療ガイドラインで推奨されているAFPとPIVKA-II単鎖の組合せより、よりHCCの診断に有用なバイオ マーカーである可能性が示唆された。Ln-γ2単鎖の各病期におけるHCC患者での陽性率は,I期 5/10例(50%),II期 12/18例(67%) ,III期 13/21例(62%),IV期 6/8例(75%)であった。同様にAFPではI期20%,II期44%,III期67%,IV期75%,PIVKA-IIではI期50%, II期56%,III期76%,IV期88%であり、ステージI/IIのHCC早期例の診断にも有用であった。肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行したHCC 29例で治療前後のLn-γ2単鎖とCT画像で治療効果を検討すると、9例(31%)でTACE後にLn-γ2短鎖の低下を認め、治療が有効であったCRあるいはPRは8例(89%)で、 PDは1例(11%)であった。一方、TACE後に血清Ln-γ2短鎖の上昇を認めた20例(69%)では,CRあるいはPRが 9例(45%)で、治療が無効であるSDあるいはPD は11例(55%)であった。血清Ln-γ2短鎖低下群で有意な腫瘍縮小効果(CRあるいはPR)を認めた。診断だけでなく、治療効果予測にも有用なバイオマーカーである可能性 がある。
2: おおむね順調に進展している
血清Ln-γ2単鎖は肝細胞癌の最も基本的な腫瘍マーカーであるAFPより陽性率が高く、臨床応用が可能なマーカーとなり得る。PIVKA-I Iとの組合せは、従来より行われているAFPとPIVKA-IIとの組合せより、より臨床的に有用なマーカーとなる可能性を示した。これらの成 果の一部をまとめ、国内外の学会で発表して注目を集めた。Cancer Science誌に報告した。
①膵癌での検討:膵癌は早期診断が困難な難治消化器癌である。これまでの少数例の検討では Ln-γ2単鎖の上昇を膵癌患者で認めた。膵癌、および良性膵疾患で血清Ln-γ2短鎖の検討を行う。②Ln-γ2上昇機序の検討:Ln-γ2は腫瘍先進部で発現が亢進することが知られている。1).切除膵組織を用いて、免疫組織化学的にLn-γ2短鎖の浸潤部での発現と脈管浸潤などを検討し、血清値と対比する。2).肝細胞癌において、特に門脈浸潤の有無をCT画像的に評価し、Ln-γ2値と対比検討する。
3年間の検討で、本研究の主要な目的である化学発光免疫測定法(CLIA)による血清Ln-γ2単鎖測定が 肝細胞癌の診断に有用で、PIVKA-2との組合せは既存のPIVKA-2とAFPの組合せより臨床的に有用である可能性があることをCancer Science誌に報告した。この間、膵癌診断に有益である可能性が明らかとなり、症例の蓄積と解析、論文作成のため1年間の延長が必要となった。
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Cancer Science
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