これまでの検討で肝細胞癌診断に有効であったことから、最終年度は膵炎・膵癌患者での有用性を検討した。 Ln-γ2短鎖の中央値は健常群 42.8 pg/mL,膵炎症例 70.9 pg/mL,膵癌症例 118.2 pg/mLであり、膵癌症例で有意に高値であった。膵癌切除30例でLn-γ2の免疫宇組織化学を施行すると、全例で腫瘍部分に発現を認めた。切除可能膵癌の77%が Ln-γ2短鎖で早期診断に有用な可能性示された。更にLn-γ2を発現する癌細胞株Panc1細胞を用いてLn-γ2発現の細胞内機序を検討した。Wnt5aのsiRNA導入でLn-γ2mRNA発現が低下し、Wnt/β catenin系の関与が示唆された。膵癌診断のバイオマーカーとして有用な可能性が示された。 研究を全体を通して、本申請で化学発光免疫測定法( chemiluminescent immunoassay; CLIA)による、自動化が可能なLn-γ2単鎖のアッセイ法の消化器癌診断への臨床応用の可能性を検討した。肝細胞癌の既存マーカーであるAFP、PIVKA-IIと比較して検討を行い、早期診断に有用なバイオマーカーであることが明らかになった。Ln-γ2単鎖とPIV KA-IIの組合せは、これまで肝癌診療ガイドラインで推奨されているAFPとPIVKA-II単鎖の組合せより、よりHCCの診断に有用なバイオ マーカーである可能性が示唆された。更に肝動脈化学塞栓療法を施行した肝細胞癌の治療前後のLn-γ2単鎖とCT画像で治療効果を検討すると、Ln-γ2短鎖の低下を認めた群では有意にCRあるいはPRが多く認めた。本研究でLn-γ2短鎖アッセイは肝細胞癌の早期診断だけでなく、治療効果予測にも有用なバイオマーカーである可能性 が示された。更に膵癌診断にも有用な可能性が示された。
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