研究課題/領域番号 |
15K08657
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
野村 昌作 関西医科大学, 医学部, 教授 (20218358)
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研究分担者 |
伊藤 量基 関西医科大学, 医学部, 准教授 (70434826)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Tリンパ球由来マイクロパーティクル / フォスファチジルセリン / LFA-1 / ICAM-1 / プロテインキナーゼC / MAPキナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、主に活性化されたTリンパ球から生成される数種類のマイクロパーティクル(TDMP)の機能、およびTSLP–樹状細胞(DC)–OX40L免疫軸に関連するヘルパーT細胞(Th)2誘導の分子メカニズムにおけるTDMPの役割を明らかにし、TDMPを主軸とした新しいアレルギー性疾患の新規病態評価法の確立をめざすものである。本年度の研究は、TDMPの構造解析ならびにアレルギー性疾患における標的細胞の検討を行った。Tリンパ球は、Biocoll reagentを用いて健常末梢血単核球(PBMC)を分離し、マグネットビーズを用いてCD3およびCD4陽性の細胞を採取した。採取したTリンパ球をA23187を用いて活性化刺激しTDMPの作成を行った。Tリンパ球膜糖蛋白関連抗原をそれぞれPE標識抗体で染色し、FITC-Annexin VおよびFITC-TFとの2 color解析を行った。またTDMP表面におけるPSとLFA-1の発現をフローサイトメトリーで測定するとともに、標的細胞のICAM-1・VCAM-1・L-&E-selectins発現に対する影響を検討した。大部分のTDMPにおいてPSの発現が認められたが、LFA-1発現は低値群・高値群の2群に分類された。標的細胞への影響は、接着分子ICAM-1の発現が誘導され、Western blottingとkinase activityの検出により、プロテインキナーゼC(PKC)活性化が検出された。また、MAPキナーゼ(MAPK)に関しては、p42/p44 MAPK、p38 MAPK、およびJNKがimmunoblotting法で検出された。以上より、TDMPは標的細胞の単球と血管内皮細胞のICAM-1の発現を亢進し、そのメカニズムにPKC とMAPKの関与重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TDMPにおけるPSの発現とLFA-1の発現は相関性があると想定していたが、実際にはLFA-1の発現は低値群・高値群の2群に分類され、PSの発現との間に乖離が認められた。一方、TDMPによる標的細胞のICAM-1発現のメカニズムには、当初の予想通りPKCとMAPKの関与が証明された。
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今後の研究の推進方策 |
健常者末梢血より樹状細胞(DC)亜群(ミエロイド系CD11c+DC:mDCおよびリンパ球系plasmacytoid DC:pDC)を純化、その後、TDMPとDCとを共培養する。24時間の刺激によって細胞とその上清の解析を行う。一方、TSLPの影響に関しては、mDCをそれぞれTSLP、R848(TLRリガンド)存在下で24時間培養し、TDMP添加後に、FACSによってCD86とOX40L発現を確認する。また、ナイーブCD4陽性T細胞をTSLPで処理したmDCと7日間、あるいはOX40Lを発現させた線維芽細胞と5日間、TDMP存在下で共培養する。その後T細胞を回収し、FACSを用いて表面各種抗原を測定した後、ELISA法を用いてサイトカインの産生を検証する。DCの活性化解析は、CD80, CD86, CD83, HLA-DRの発現を指標としフローサイトメーターで解析する。また細胞上清におけるサイトカインの量をELISA法にて測定する。さらに活性化の指標となるDCの重要な活性化シグナル分子として、MAPK pathway,PI3K pathway,Rho family, RIG-I、MDA5、LGP2、MyD88、TRIF、TRAF6、IRAK4、NFκB、IRF familyなどをターゲットとしてPCR法やWestern Blot法、PhosFlow法等を用いて解析し、最終的にTSLP–mDC–OX40L免疫軸への関与を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
TDMPの構造解析は、ほぼ計画通り実験が進行したが、アレルギー性疾患における標的細胞の検討は、計画の半分程度しか実験が進行しなかったので、未達成分の研究費を次年度にまわすこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画の変更はないが、アレルギー性疾患における標的細胞の検討で未達成の部分について実験計画の追加を行うこととした。
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