臨床検査室でも実施可能なClostridium difficile のPCRによる簡易タイピング法の開発を行った。開発の方向性として黄色ブドウ球菌等で成功しているORF保有パターンによる遺伝子型決定法(PCR based ORF typing法、POT法)を応用した。 検出するORFを選別するため、インターネット上のゲノムデータおよび、臨床分離株のドラフトゲノムデータを比較、検討した。ゲノムデータの比較は独自に開発したRubyスクリプト及びMySQLデータベースを使用した。ゲノムデータの比較結果から菌株によって保有状態が異なるORFを合計49個選択し、それぞれのORFを検出するためのプライマーを設計した。あらかじめMLSTによってタイピングした臨床分離株24株を用いて、タイピングに有効なORFを絞り込んだ。 その結果、10個のORFの有無の組み合わせで、PCR-ribotyping型及びMLST型と相関のある分子疫学解析が可能であった。また、6個のORFの有無を組み合わせることで、同一PCR-ribotyping型の分離株を細分類することができた。前記16個のORFに、toxin A及びB、並びにbinary toxinを検出するプライマーを加え、2系統のマルチプレックスPCR反応によるPOT法が設計できた。 2004年から2015年に臨床分離された84株を用いてC. difficile用POT法の評価を行った。84株は47のPOT型に分けることができた。また、MLSTとの相関が期待された10個のORFの保有パターンはST型と良く一致した。設計したPOT法は通常のPCRを行うための装置があれば実施可能で有り、遺伝子型はORFの有無によって決めることから曖昧さがなく、C. difficileの分子疫学解析が容易となると期待される。
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