研究課題
尿道狭窄モデル(pBOOモデル)作成2週間後には、膀胱重量が増大した(2-3倍)。顕微鏡で観察すると、粘膜下層の間質に線維芽細胞を主とする増殖と、筋層と奨膜との間に間質が肥厚しここにも線維芽細胞の増殖が認められた。筋層は存在しているが線維芽細胞が浸潤していた。神経線維は奨膜側では存在しているが、筋層ならびに粘膜下層では神経線維の分布があまり認められなかった。非麻酔下拘束のpBOOモデルラットの膀胱内にあるカテーテルから膀胱内を持続灌流し膀胱内圧測定した。排尿反射を起こす膀胱容量は1.3-1.6mlとコントロールラットの2-3倍の容量で、排尿反射発生の閾値圧は18-24mmH2Oとこれもコントロールラットの3-4倍であった。最大の特徴は排尿反射を起こす前に小刻みな膀胱収縮が認められ(1-2Hz)るが、これは尿道からの尿排出を伴わなかった。pBOOモデルラットの膀胱をウッシグチェンバーを用いて粘膜側または漿膜側からATPを測定した。小型ウッシグチェンバーに摘出した膀胱をセットし、粘膜側を灌流液2mlのチェンバーから200ulを採取し、ATP量をルシフェリン-ルシフェラーゼを用いて測定した。pBOOモデルではATP量がコントロールラットの1.7-2.3倍であった。奨膜側でpBOOモデルではATP量は、3-6pM計測された。奨膜側から粘膜側にむかって30cmH2Oの水圧をかけるとATP量は最大2.4-2.8倍に記録したが、pBOOモデルとコントロールとでは増加率に差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
人における尿道狭窄では排尿以前に膀胱の収縮が起こることや、膀胱からの蓄尿信号が起こりやすくなっている。今回のpBOOモデルの検討目的を排尿前に排尿しない膀胱収縮がおきる機構の検討をしたいことにあった。初年度はpBOOモデルの作成に関して2週間後を1つの評価ポイントとして、排尿反射を調べる生理学検討で、尿流出のない膀胱収縮の記録ができ、それが組織・生化学変化と比較できないか。さらにATP量にどう反映されるかを検討できたことにある。これによりpBOOモデル作成も、結果も安定してきている。
昨年度結果を学会発表、論文投稿していくための準備を行うとともに実験結果の詳細な検討、系時的変化の固体差の検討が必要とされる。また、今年度の具体的検討に以下のように計画する。① 尿道狭窄モデルでの形態変化と信号物質の変化平滑筋(αSMA、Calponin、Myosin 9-11)、間質細胞(vimentin)、 炎症細胞(TGF-β)、神経成長因子(NGF)を上皮細胞・粘膜下組織・平滑筋・漿膜・漿膜下組織でウエスタンブロット・RT-PCRで検討し、術後3、7、14、28日および42日に組織での変化を検討する。さらにISHによってこれらのmRNAの細胞への局在の経時的変化も検討する。② 膀胱急性拡張モデルでの形態変化と信号物質の変化と排尿反射の検討ラットに一日1回4mlを強制飲水させる。代謝ケージで排尿量を測定すると飲水後2-3時間は明らかに排尿回数・排尿量は増大する。一週間これを繰り返した後に膀胱重量の変化・平滑筋(αSMA、Calponin、Myosin 9-11)、間質細胞(vimentin)、炎症細胞(TGF-β)、神経成長因子(NGF)を上皮細胞・粘膜下組織・平滑筋・漿膜・漿膜下組織で検討する。
予定より動物飼育費が少なかった。
動物実験を引き続き行うので、動物飼育費に使用予定です。
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Am J Renal Physiol
巻: 310 ページ: F646-F655
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Advances in Therapy
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