研究課題/領域番号 |
15K08666
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山浦 克典 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (10543069)
|
研究分担者 |
佐藤 洋美 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (30506887)
樋坂 章博 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80420206)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | H4受容体アンタゴニス / イミキモド(IMQ)乾癬マウス / 掻痒 / 掻破回数 / NGF mRNA / SCLABA-Real / H4R KOマウス |
研究実績の概要 |
乾癬治療において、掻痒症状のコントロールはQOLの改善のみならず、乾癬病巣の拡大抑制の観点からも重要であるが、乾癬性掻痒症に有効性の高い治療薬はなく、乾癬掻痒の動物評価系も存在しない。そこで本研究では、乾癬性掻痒症の新規マウス評価系を確立し、さらに乾癬性掻痒症の起痒に関与する因子の解析を目指す。昨年度は乾癬モデルマウスの作成に着手し、イミキモド(IMQ)誘発乾癬モデルマウスを選択し、当該モデルマウスの皮膚病変形成に対してH4受容体(H4R)拮抗薬(JNJ28307474, 100 mg/kg)が耳介腫脹及び肥厚スコアを有意に抑制し、紅斑及び合計スコアに対し抑制傾向を示すことを報告した。さらに、本作用はIL-36産生誘導抑制を介する可能性を報告した。 本年度は、昨年度確立したIMQ乾癬マウスを用い、当該マウスに掻痒が誘発されることを確認した後、同H4R拮抗薬の掻痒に対する作用を評価した。IMQ乾癬マウスの掻痒はSCLABA-Real(Noveltec)を用いて掻破回数を指標に定量した。IMQ乾癬マウスの掻破回数は正常マウスに比較して有意に増加し、この時乾癬様病変組織の神経成長因子(NGF)mRNA発現も有意に亢進した。H4R拮抗薬のJNJ28307474(100 mg/kg)は掻破回数およびNGF mRNA発現量に対し、有意ではないものの抑制傾向を示した。そこで、H4Rノックアウト(KO)マウスを用い、IMQ乾癬マウスを作成し掻破回数を野生型(WT)マウスと比較したところ、KOマウスにおいても掻痒は誘導され、掻破回数においてWTとKOマウスの違いはみられなかった。病変組織のNGF mRNAもIMQ乾癬誘導によりWT同様KOマウスで発現が増加した。 今後、IMQ乾癬マウスの掻痒に対するH4R拮抗薬の抑制作用とH4R KOマウスより得られた知見について両者の食い違いを明らかにする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
掻破行動測定装置として選定したSCLABA-Realで、昨年度皮膚病態の発症条件を確立したIMQ乾癬マウスの掻破回数を予定通り定量することが出来たこと、さらに、IMQ乾癬マウスにおいて、仮説通り掻痒が誘発出来たことから、今年度は計画通りに研究を進展させることができた。 また、H4R拮抗薬を用いた抗掻痒作用の検討では、昨年度確認したJNJ28307474の経口投与量を適用することができたので、すみやかにIMQ乾癬マウスの掻痒に対する有効性評価が行えた。さらに、本年度は掻痒誘発因子についても検討を開始し、NGF mRNAがIMQ乾癬マウスの掻痒に関連性の高い可能性を見い出せた。
|
今後の研究の推進方策 |
H4R KOマウスを用いて作成したIMQ乾癬マウスでは、WTマウスを用いて作成したIMQ乾癬マウスと同等の掻破回数を示すことから、IMQ乾癬マウスの掻痒においてH4Rの関与が小さい可能性が考えられる。一方、H4R拮抗薬のJNJ28307474(100 mg/kg)がIMQ乾癬マウスの掻破回数を抑制する可能性を示唆する結果も得ている。そこで、H4R KOマウスを用いて作成したIMQ乾癬マウスに対し、JNJ28307474を経口投与し、掻破回数に影響しないことの検証試験を実施する必要がある。
これまで乾癬掻痒の動物評価系が無かったため、本研究において新規評価系を提案することの意義は大きいと考える。そこで、今回作成したIMQ乾癬マウスの掻痒に関する特徴を明らかにすべく、近赤外線を使用する事で夜間の掻破回数の測定が可能であるSCLABA-Realの特性を生かし、マウスの光周性を加味して明期と暗期における掻痒発現の違いを解析し、当該モデルマウスにおける最適な掻破回数の測定点を明らかにする。また、乾癬病変組織よりmRNAを抽出し、掻痒関連因子のmRNA発現量を定量的に解析する。掻痒関連因子として、脱顆粒物資(MCP-6)、神経ペプチド(NGF、NT3)、Mas関連Gタンパク質共役受容体アゴニスト(BAM8-22)を測定候補とする。
|