研究課題
時に痒みは痛み以上に耐え難く非常に苦痛を伴う感覚であるにもかかわらず、痛みに比べ脊髄における痒み情報伝達機構の詳細は不明なことが多い。申請者が行ってきた研究によって、痒覚は脊髄表層に伝達されるなど電気生理学的解析により明らかにしてきた。更に、痒覚伝達を担う受容体に注目し実験を行い、痒みの情報伝達物質としてはグルタミン酸がメインで用いられており、GRPやNppbは修飾的な役割をしている可能性を示した。しかし、未だ脊髄表層痒みニューロンの形態やその調節機構は未だ不明ある。そこで、今回我々は後肢皮膚へ5-HT投与により応答した脊髄後角細胞の形態学的解析と電気生理学的解析を行い5-HT応答細胞の特徴を解析した。5-HT投与により応答の見られた細胞に対して電流注入を行うことによって細胞の発火パターンによる解析を試みた。脊髄表層細胞では電流注入によってTonic、Phasic、delayed、initialと4つの発火パターンに分類できることが報告されている。5-HT応答細胞の発火パターンを解析したところ、Tonic及びdelayedの発火パターンを示す細胞が多く見られた。これらの発火パターンを示す細胞は興奮性の介在ニューロンであることが多いことが過去に報告されている。それを確かめるべく、現在5-HT応答細胞の形態学的解析を行っているところである。以上のことから、5-HT応答細胞の多くはTonic及びdelayedの発火パターンを示し、これらの細胞は興奮性の介在ニューロンの可能性が高いことを明らかにした。これらの研究結果は、2016年に開催されたThe 26th International Symposium of Itch.、第67回日本薬理学会北部会などで発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究で、痒み中枢への情報伝達系を解明するために、in vivoパッチクランプ法を用い起掻物質である5-HTをラット下肢皮膚へ投与し脊髄後角における詳細なシナプス応答解析により、痒み受容ニューロンの多くはある種のTRPチャネル発現線維の入力を受けていることを見出した。更に、この5-HTによる痒み情報伝達にはグルタミン酸が用いられており、GRPやNppbは修飾的な役割をしている可能性を示した。今回申請者は、5-HT応答細胞の特徴を電気生理学的に解析し、5-HT応答細胞の多くはTonic及びdelayedの発火パターンを示すことを見出した。これらの発火パターンを示す細胞の多くは興奮性の介在ニューロンであることが報告されており、申請者は現在形態組織学的解析を行うことでその分類に着手しているところである。これらの結果は、The 26th International Symposium of Itch.、第67回日本薬理学会北部会などで発表を行った。以上のことから、おおむね研究計画通りに研究が出来ていることから順調に進展していると考えられる。
現在行っている、5-HTに応答した膠様質ニューロンの詳細を調べるために免疫組織学的手法を用いて形態染色をさらに進める。同時に、より詳細な解析を行うために、分担研究者である岡山大学高浪景子博士と三次元電子顕微鏡を用いた痒みニューロンの形態的特徴や軸索投射部位の詳細を解析を行う。電気生理学的解析や組織学的解析を行い、脊髄における掻痒シナプス伝達を担う基盤神経回路の同定と情報処理機構の全容を明らかにすることを目的とする。
28年度形態組織学的解析を行い痒み応答ニューロン同定のための、より詳細な情報源となる痒み応答ニューロンの電気生理学的な解析をメインとした実験を行っていたため既存の装置で実験が遂行できた。そのため29年度に助成金を繰り越し、形態組織学的解析を行うための消耗品等の調達を行う事とした。
29年度は5-HTに応答した膠様質ニューロンの詳細を調べるために免疫組織学的手法を用いて形態染色を行う。更に、詳細な解析を行うために、分担研究者である岡山大学高浪景子博士と三次元電子顕微鏡を用いた痒みニューロンの形態的特徴や軸索投射部位の詳細な解析を行う。29年度はそのための消耗品等の調達を行う予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 16件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 7件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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