研究課題/領域番号 |
15K08669
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小山 なつ 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (50135464)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 恐怖記憶 / 恐怖消去学習 / エンリッチ環境 / 報酬系 / 恐怖回避モデル |
研究実績の概要 |
平成28年は「エンリッチ環境での恐怖条件付け学習と行動量の関係、および消去学習効果」について、行動学的に検証した。 C57BL/6系オスマウスを対象とし、エンリッチ群と対照群に分け、マウスは1ケージに4~5匹で飼育した。エンリッチ群のケージには12週齢から回転盤付イグルーを入れ、回転盤上を走ったり、ドーム型の隠れ家で遊ぶことができる。 16週齢から行動実験を開始した。音手がかり刺激(条件刺激)とフットショック(非条件刺激)との連合学習を行い、文脈テストおよび手がかりテストの不動化時間で、条件付け学習効果を評価した。近接記憶あるいは遠隔記憶を評価した後に、消去学習を行い、恐怖記憶の保持を解析した。条件付け記憶の不動時間はエンリッチ群で低下が認められたが、分散も大きかった。エンリッチ群では活動量が亢進している可能性を考え、行動量を解析した。エンリッチケージには回転盤を入れているので、輪回しなどによる行動量の比較は適当ではないので、オープンフィールドテストを連日行い、馴化後の3日目の行動量を比較した。エンリッチ群の一部に行動量が著明に多い個体が認められ、オープンフィールドテストにおける総行動距離と、恐怖条件付けテストにおける不動時間には負の相関関係が確認された。単独個体での飼育よりも複数個体で飼育するほうが、神経新生は促進されるという報告があるために複数個体一緒に飼育したが、ケージ内の個体に順位が形成されるために回転盤占有時間にも差が出る可能性もある。著明に活動の亢進が認められた個体では、不動時間の低下は活動時間の亢進によるとも解釈できるが、報酬系の亢進により忘却が促進された可能性も否定できない。 消去学習のプロトコールに関しては、単独個体での消去処理よりも、複数個体での消去処理の効果が有意に高いことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単独個体での飼育よりも複数個体で飼育するほうが、神経新生は促進されるという報告があるので、対照群もエンリッチ群も複数個体一緒に飼育している。エンリッチ環境では適度な運動が学習効果を促進させる結果を期待したが、恐怖条件付けによる不動時間には分散が大きかった。エンリッチケージ内でのそれぞれの個体の運動量を解析するのは困難なため、オープンフィールドテストなどで行動量を解析したところ、過活動の個体ほど不動時間が短いことが判明した。不動時間の短縮は通常恐怖記憶の低下と解釈されるが、過活動の個体での学習効果の評価は慎重に解釈する必要が生じた。エンリッチ環境や消去学習法について、さまざまなプロトコールを検討しているため、行動実験以外の実験計画は遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで回転盤付イグルーを入れたケージに複数のマウスを入れて、エンリッチ群としてきたが、同じケージ内の固体の活動量をさまざまであるので、個体の行動量に対応した解析も行う。恐怖条件付け学習、および消去学習には、情動に関連する扁桃体、記憶に関連する海馬、および前頭葉が関与するが、および報酬系の関与についても検討する。
|