研究課題/領域番号 |
15K08673
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
熊本 栄一 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (60136603)
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研究分担者 |
藤田 亜美 佐賀大学, 医学部, 准教授 (70336139)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オレキシンA / オレキシンB / 脊髄後角 / 抑制性シナプス伝達 / GABA / グリシン / ラット / パッチクランプ法 |
研究実績の概要 |
我々は前年度までに、痛み伝達制御に重要な役割を果たす脊髄後角第II層(膠様質)ニューロンにおいて、オレキシンA(OXA)とオレキシンB(OXB)のいずれも膜の脱分極と神経終末から起こるグルタミン酸の自発放出を促進させることを明らかにした。これらの作用は膠様質ニューロンの膜興奮性を増加させるので、オキシトシン作用と同様、自発性の抑制性シナプス伝達を促進させる可能性がある。今年度、成熟ラット脊髄薄切片の膠様質ニューロンにパッチクランプ法を適用し0 mVの保持膜電位で自発性の抑制性シナプス後電流(sIPSC)を記録して実験を行った。OXAやOXBは0.05 μMの濃度で2分間灌流投与した。OXBは調べたニューロンの71%でグリシン作動性のsIPSCを促進させたが、GABA作動性のsIPSCに影響を及ぼさなかった。一方、OXAは、グリシン作動性だけでなくGABA作動性のsIPSCも促進させた。つまり、グリシン作動性sIPSCは調べたニューロンの79%で、GABA作動性のsIPSCは調べたニューロンの51%で促進された。OXAとOXBによるsIPSCの促進作用は電位作動性Na+チャネル阻害薬のテトロドトキシン存在下で消失したので、活動電位(AP)の発生を介していた。OXB作用はOX2受容体阻害薬(JNJ10397049)で抑制される一方、OX1受容体阻害薬(SB334867)に抵抗性であった。これとは逆にOXA作用はSB334867により抑制される一方、JNJ10397049に抵抗性であった。以上より、OXAはOX1受容体の活性化によるAP発生を介してグリシンとGABAを介するシナプス伝達を、OXBはOX2受容体の活性化によるAP発生を介してグリシンを介するシナプス伝達を促進させることが明らかになった。これらの抑制性シナプス伝達の促進は鎮痛に寄与することが示唆される。
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