研究課題/領域番号 |
15K08678
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
溝口 広一 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (30360069)
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研究分担者 |
桜田 忍 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (30075816)
渡辺 千寿子 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (90296020)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多発性硬化症疼痛 / 難治性疼痛 / Morphine / Methadone / NMDA受容体 |
研究実績の概要 |
多発性硬化症疼痛のアロディニアに対しては、麻薬性鎮痛薬であるmorphine、fentanylおよびmethadoneの皮下投与による鎮痛作用は著しく減弱する。そこで、多発性硬化症疼痛のアロディニアに対する、各種麻薬性鎮痛薬の脊髄クモ膜下投与による鎮痛作用を検討した。その結果、皮下投与の場合と同様に、morphine、fentanylおよびmethadoneの脊髄クモ膜下腔内投与による鎮痛作用は著しく減弱した。以上の結果から、多発性硬化症疼痛のmorphine抵抗性(難治性疼痛化)は、少なくとも脊髄における鎮痛効果減弱を反映している可能性が示唆された。 一方、κオピオイド受容体作動薬であるnalfurafineや麻薬性鎮痛薬であるoxycodone(脊髄において内因性κオピオイドペプチドの遊離作用を持つ)の皮下投与ならびに脊髄クモ膜下腔内投与による鎮痛作用は、多発性硬化症疼痛に対しても減弱しない。そこで、多発性硬化症疼痛発症時における、脊髄μおよびκオピオイド受容体のmRNA発現量を測定した。その結果、μオピオイド受容体およびκオピオイド受容体のmRNA発現量は、多発性硬化症疼痛発症時に変化は認められなかった。 多発性硬化症疼痛のmorphine抵抗性は、NMDA受容体拮抗薬の単回腹腔内投与により消失し、morphineの鎮痛効果は多発性硬化症疼痛発症前のレベルまで回復する。そこでNMDA受容体拮抗薬であるMK-801あるいはNMDA受容体拮抗作用を持つ麻薬性鎮痛薬であるmethadoneを、多発性硬化症疼痛の形成前(免疫感作直前)、形成中(免疫感作1日後)あるいは形成後(免疫感作5日後)に投与し、MK-801およびmethadoneが多発性硬化症疼痛のmorphine抵抗性を消去する条件を検索した。その結果、MK-801およびmethadoneは、免疫感作直前、免疫感作1日後、免疫感作5日後のいずれの時点で単回投与しても、免疫感作6日後のmorphineの鎮痛を多発性硬化症疼痛発症前のレベルまで回復させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
下記の様に、複数の実験機器が故障したため、平成27年度と平成28年度に実施を予定していた各種実験の実施順序を一部入れ替えた。遺伝子を増幅するサーマルサイクラーが故障したため、同機器を新規購入し納品されるまで、遺伝子測定の実験が一時中断した(繁忙期であったため、他教室所有の機器を借用することは無理であった)。また、組織標本を作製するために使用するクリオカットが故障し、免疫学的組織化学染色法の実験が長期中断中である。本機器は、高価であり本学内唯一の機器であったために、代用機器が存在しない。現在、大学による同機器の修理および新規購入を待っている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、RT-PCR法ならびにWestern Blot法により多発性硬化症疼痛発症時におけるNMDA受容体の機能変化を測定中である。次年度は当初予定の実験(一部はすでに本年度に実施済みである)に加え、クリオスタットが納品され次第、初年度に実施を延期した免疫学的組織化学染色法を用いた実験を完遂する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器の故障が原因で、平成27年度と平成28年度に実施を予定していた各種実験の実施順序を一部入れ替えた。それに伴い研究費の使用計画に変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の当初研究計画に加え、クリオスタットが納品され次第、繰り越した研究費を使用して初年度に実施を延期した免疫学的組織化学染色法を用いた実験を完遂する予定である。
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