研究課題
Morphine抵抗性を示す多発性硬化症疼痛などの難治性疼痛に対するmethadoneを用いた特異的治療法の開発を試み、以下の知見を得た。多発性硬化症の形成に伴い触的アロディニアや熱的疼痛過敏といった多発性硬化症疼痛が発現し、これら多発性硬化症疼痛は麻薬性鎮痛薬であるmorphine、fentanylおよびmethadoneに抵抗性を示した。この多発性硬化症疼痛のmorphine抵抗性は、NMDA受容体拮抗薬であるMK-801あるいはNMDA受容体拮抗作用を合わせ持つ麻薬性鎮痛薬であるmethadoneを単回腹腔内投与することにより消失し、morphineの鎮痛効果は多発性硬化症疼痛発症前のレベルまで回復した。また、多発性硬化症疼痛の形成開始時からmethadoneを慢性的に投与することにより、多発性硬化症疼痛により発生する熱的疼痛過敏の形成がほぼ完全に抑制された。一方、多発性硬化症疼痛発症時における脊髄μオピオイド受容体およびNMDA受容体NR2BサブユニットのmRNA発現量を測定したが、有意な変化は認められなかった。また同様に、Western Blot法を用い多発性硬化症疼痛発症時における脊髄μオピオイド受容体とNMDA受容体のタンパク量を測定したが、こちらも多発性硬化症疼痛発症時に変化は認められなかった。さらに、多発性硬化症疼痛と同様に、炎症性慢性疼痛ならびに神経障害性疼痛といった他の難治性疼痛におけるmorphine抵抗性が、methadoneの単回投与により消失しmorphineの鎮痛効果はこれら難治性疼痛発症前のレベルまで回復した。以上本研究課題において、methadoneはその単回投与によって多発性硬化症疼痛、炎症性慢性疼痛、神経障害性疼痛といった難治性疼痛におけるmorphine抵抗性を解除し、これら難治性疼痛をmorphineが有効な疼痛に変化させることを発見した。また、このmethadoneの効果にはNMDA受容体拮抗作用が関与している事を明らかにし、難治性疼痛の画期的治療法を発見した。
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Current Medicinal Chemistry
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