成熟雄性マウスから作製した脊髄スライス標本において、膠様質のニューロンからパッチクランプ法にてホールセル電流を記録した。興奮性シナプス後電流EPSCsは、グルコン酸カリウムを主成分とする記録用電極を用い-70 mVの保持電位において、記録細胞の近傍を電気刺激(eEPSCs)あるいは後根を吸引電極を介して電気刺激(A線維誘発EPSCs、C線維誘発EPSCs)して誘発した。また、微小興奮性シナプス後電流mEPSCsはtetrodotoxin存在下に記録した。GAT1阻害薬NNC-711は、eEPSCsとA線維誘発EPSCs の振幅には影響せずにC線維誘発EPSCsの振幅に対して有意な抑制作用を示した。GAT3阻害薬SNAP-5114は、eEPSCsの振幅に対して抑制傾向を、A線維誘発EPSCs とC線維誘発EPSCsの振幅に対して有意な抑制作用を示した。この抑制作用はA線維誘発よりもC線維誘発に対する方が強かった。一方、平成28年度までに示したNNC-711によるmEPSCsの頻度抑制作用とは異なり、SNAP-5114 はmEPSCの振幅及び頻度のいずれに対しても作用を示さなかった。電気生理学的実験と並行して行動実験も実施した。坐骨神経を部分結紮して作製する神経障害性疼痛モデルマウスの機械アロディニアに対し、脊髄髄腔内に投与したSNAP-5114は抑制作用を示した。その作用発現は緩徐で投与後90分にかけて増大を続け、平成28年度に示した脊髄髄腔内投与したNNC-711の抗アロディニア作用が投与後15分から30分には最大に達したのとは明らかに異なった。
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